【赤いシンボルマークが懐かしい】1970年に販売されたSEIKO製の“大阪万博”記念時計!今回はいかに

2025/02/12
by 堀内 大輔

158の国と地域が参加して、大阪 此花区の人工島・夢洲を会場に開催される大阪・関西万博。海外パビリオンの建設の遅れや入場チケットの販売が低調だったりと何かと問題が指摘されているなか、いよいよ2カ月後に迫った。そして4月13日から10月13日までの半年間で約2820万人の来場者を見込む。

ちなみに55年前に開催された前回の大阪万国博覧会(EXPO’70)は77カ国、116のパビリオンで1970年3月14日に開催。183日間で約6400万人が訪れた。なかでもダントツの1番人気はアメリカ館。“月の石”をはじめ“アポロ8号”の司令船の実物展示をなど世界中が注目していた『アポロ計画』の展示が大きな話題を呼んだことは、60歳代以上の御仁なら懐かしく思いだされるに違いない。

今回、ここに取り上げた時計は、アンティーク時計の専門誌が運営する検索サイト「LowBEATマーケットプレイス」に掲載されていた、そんな55年前の大阪万博(EXPO’70)を記念してセイコーがリリースした腕時計である。

そのため風防の12時位置には、桜をかたどった当時のシンボルマークがデザインされている。五つの花びらで5大陸、中央の丸は日本を表現したものだった。ベースとなったモデルは1967年に諏訪精工舎から発表された“61ニューファイブDX(デラックス)”である。

このセイコーのほかにも当時万博に出展していたリコーも、シンボルマークを模した斬新なケースデザインの大阪万博記念モデル「RICOH EXPO’70」(手巻き)が腕時計型とペンダント型で販売され人気を博した。

さて、今回も同様の記念モデルがはたして出るのだろうか。。。

時計◎「SEIKO 6119-8090 大阪万博 EXPO'70」自動巻き 9万8000円/協力◎WTIMES
文◎LowBEAT編集部



【やっぱりロレックスがほしい!】アンティークの狙い目モデルを教えます

2025/02/10
by 堀内 大輔

フルアラビアインデックスをもつ、1930年代後半(写真右)と40年代製のロイヤル



かつてロレックスは、そのモデルに様々なペットネームを与えた。
有名なのはバイセロイやエアキング、そしてプリンスだが、なかには穴と言えるモデルもある。そのひとつがロイヤルだ。

少なくとも1930年代半ばにリリースされたロイヤルは、手巻きモデルのペットネームのひとつとして、60年代後半(70年代説もあり)まで存続した。ロイヤルの魅力は、名前にふさわしく、品のあるモデルが多い点。ベーシックなオイスターケースと異なり、40年代から50年代のロレックスらしい造形と、ユニークなデザインを併せもったモデルが多いのだ。

なおスピードキングは、ロレックスの愛用者だったイギリス人のレーサー、サー・マルコム・キングにちなんだ名前という説が濃厚だが(後にチャック・イェーガーがロレックスを着けて音速を超えた後、エアキングに変更された)、ロイヤルも同様に、イギリス市場向けに命名されたという話がある。
真偽は定かではないが、当時のロレックスがブリテン“王国”という市場を、どこよりも重視していたことは間違いない。事実、ロイヤルがリリースされたといわれる35年、ロレックスはジュネーブとロンドンにのみ、事務所を構えていた。

またロイヤルは一貫して、手巻きムーヴメントしか搭載してこなかった。そのため自動巻きのパーペチュアルに比べてメンテナンスが容易なうえ、ローター芯や自動巻き機構の摩耗などもない。比較的使用頻度の高いロレックスの場合、へたっている個体は多いが、メンテナンスをすれば性能が戻る可能性は高いし、場合によってはジェネリックパーツで修復できなくもない。
ただ純粋に実用性を考えると、おすすめのムーヴメントは、後年のモデルが採用したCal.1210だ。非常に完成された設計をもつため、メンテナンスが容易なうえ、メンテナンスすれば比較的良い精度が得られる。また後継機の1225が1980年代まで作られたため、部品もまだ入手できる。

普通のプレシジョンではなく、ちょっと変わったロレックスが欲しい人にとって、ロイヤルは面白い選択肢のひとつとなるはずだ。しかもいまならば、まだ価格も高くない。


【そのほかのロレックスの時計をLowBEATで探す】



【フジツボって知ってる!?】往年のロレックスゴールド系サブマリーナー

2025/02/07
by 堀内 大輔

1953年に誕生したロレックス サブマリーナーだが、深海に潜る潜水士のためのプロフェッショナルモデルとして開発された経緯もあって、基本的には質実剛健なステンレススチール仕様中心の展開だった。
ゴールドモデルの投入は、ラグジュアリー路線を模索したロレックスの経営戦略もあったのだろう。GMTマスターは1950年代から金無垢仕様をラインナップしていたが、サブマリーナー初のゴールドモデル登場は1960年半ばとなった。それがRef.1680/8だ。

Ref.1680/8はプラ風防で200m防水、搭載ムーヴメントはクロノメーター仕様のCal.1575という、当時のステンレスモデルと同等のスペック。だが、イエローゴールドの外装はやはり眩くゴージャスだ。ブレスレットは巻きブレスはなく、無垢のハードブレスとジュビリーブレスの2種類が存在する。

Ref.1680/8の最大の特徴は、いわゆるフジツボダイアルを採用していることだろう。インデックスのゴールド部分が大きく、海の岩場に生息するフジツボのように盛り上がった形状は立体感があり、ロレックスマニアの間で人気が高い。80年代まで製造されていたロングセラーだが、金無垢で価格が高かったこともあって、製造量はステンレス仕様よりはるかに少なく、しかも人気のフジツボダイアルとなると、現在の市場ではかなり高額で取り引きされている。

金無垢2世代目のRef.16808は、風防がサファイアクリスタルに更新されて、防水性能も300mにアップ。搭載ムーヴメントは毎時2万8800振動へとハイビート化されたCal.3035である。全体のスペックはかなりハイレベルで、この世代になると現行モデルと同様に安心して使える。ダイアルカラーはブルーとブラックなどが存在するが、ブルーのほうが人気が高い。このRef.16808にもフジツボダイアルは存在し、やはり市場では珍重されている。


1990年頃から2008年まで製造されていた金無垢Ref.16618は、ツインブリッジ化されて動作の安定性が向上したCal.3135をムーヴメントに採用。基本的なデザインはRef.16808を踏襲するが、ブレスレットなどの質感が向上していて高級感がアップしている。この辺の世代となると現行品とほぼ遜色がなく、逆にヴィンテージな味わいはあまり感じられない。

一方で金無垢よりも使いやすいコンビモデルは、1980年代のRef.16803が最初のモデルで、実はかなり登場が遅かった。こちらも初期の個体にはフジツボダイアルが存在する。しかし、コンビモデルはまだそれほど世代を経ていないので、他には際立ったコレクターズアイテムは特に見当たらない。

アンティークロレックスファンに人気が高いのは、やはり金無垢ファーストモデルのRef.1680/8や、セカンドモデルのRef.16808あたりだろう。それ以降のモデルとなると高年次だということもあって、それほど枯れた雰囲気が出ていないのだが、個体によっては文字盤の褪色でいい味が出ているものもあり、これから注目度がアップしていきそうな気配はある。

日焼けした肌にゴールドはよく映えるし、夏向け時計としてゴールドサブマリーナーの需要は高い。金の価値が上がっている現状では、金無垢やコンビモデルの人気もますますアップしていくだろう。


【商品詳細】YG(40mm径)。自動巻き(Cal.3035)。1987-88年頃製。499万4000円。取り扱い店/コミット銀座



【そのほかのロレックスの時計をLowBEATで探す】



【ヴァシュロン・コンスタンタンのアンティーク時計がほしい】初心者は何を買ったらいいのか?

2025/02/05
by 堀内 大輔


業界唯一のアンティーク時計の専門誌「ロービート(LowBEAT)」編集部が毎週水曜日にお届けしているアンティーク時計初心者向けの入門記事。今回はヴァシュロン・コンスタンタンについて解説したいと思う。



おすすめは手巻きムーヴ。さらにデコ系かモダン系かもポイント

ヴァシュロン・コンスタンタンもパテック フィリップと同様に1940年代以降の個体であれば性能や作りのクオリティは総じて良い。そして何よりもパテックよりも格段にコストパフォーマンスは高く魅力は大きい。そんなヴァシュロン・コンスタンタンの狙い目はやっぱり信頼性という点で手巻きに軍配が挙る。

ヴァシュロン・コンスタンタンは38年から65年までジャガー・ルクルトと業務提携を結び、ルクルトから多くのムーヴメントの供給を受けている。当時はルクルトも開発に力を入れていた時期だったこともあってムーヴメント自体優秀だった。しかしヴァシュロン・コンスタンタンに使用されたそれらのほとんどはスワンネック緩急針に変更されたり、耐震装置が加えられたりと高級仕様に改良されて搭載されていたため自社ムーヴメントではないが高く評価されている。

そんな手巻きで実用を考えた場合に選択肢のひとつとなるのが1950年代後半に開発された薄型のCal.1001(スモールセコンド)かセンターセコンドの1002だ。また、ムーヴメントにこだわりたい場合は、高額となるがハイグレードな仕様と美観を備えた40年代のCal.453や454という選択もありだろう。

なおヴァシュロン・コンスタンタンを選ぶ際にムーヴメント以外にもうひとつ覚えておいて欲しい点がある。それはケースの造形だ。40年代のヴァシュロンにはラグの造形などデコラティブなものが少なくない。つまり、40年代のデコ系か50年代のモダン系かという点もヴァシュロンならではの重要なポイントなのである。

文◎LowBEAT編集部


【いまとは雰囲気が全然違う!?】往時のアンジェラスを代表する傑作クロノグラフ

2025/02/03
by 堀内 大輔

2015年に復活を果たし、現在はシチズン傘下のブランドとして、スケルトン仕様をはじめとした独創的なスタイリングの複雑モデルを中心に展開するアンジェラス。

その起源は1891年までさかのぼり、休眠状態となる1970年代まで自社でムーヴメントも製造する独立系のマニュファクチュールとして活躍していた。
なかでも1940年代から60年代にかけて製造したクロノグラフムーヴメントは高く評価されており、実力派クロノグラフメーカーとして確固たる地位を確立。いまなお多くのアンティーク愛好家を虜にしている。

そんな往時のアンジェラスの代表作と言えるのが、今回取り上げる1942年発表の“クロノデイト”である。これは、2カウンター仕様のクロノグラフにトリプルカレンダー表示を組み合わせた、当時としては革新的なモデルだった。

しかも、カレンダーの配置が非常にユニークである。小窓式の月表示を12時方向に、同じく小窓による曜日表示を6時方向にレイアウトし、センターにポインターデイトを備えているのだ。そのため文字盤レイアウトの上下、左右が対称となっているのが特徴だ。カレンダー表示を対角にレイアウトすることは、スペース効率という面でいえば良くなかったはずだが、結果、これがクロノデイトに強い個性を与えたことは間違いない。

搭載しているのは手巻きのCal.217で、複雑機構を備えるため直径は33mm、厚みは6.55mmと大きい。そして大ぶりなムーヴメントを納めるため、ケースも38mm径と当時としては大きかった。だが、当時としては大きなケースも、現代の基準からすると程よいサイズ感であり、これも今日の愛好家から支持されるポイントと言える。

【商品詳細】18KYG(38mm径)。手巻き(Cal.217)。1940年代製。83万6000円。取り扱い店/プライベートアイズ ショップページに移動


【LowBEAT Marketplaceでクロノグラフを探す



【億超えだって珍しくない!?】ロレックス究極の上がり時計“金無垢デイトナ”

2025/01/31
by 堀内 大輔

レモンカラーの文字盤をもち、“レモン・ポール”の通称で知られる手巻きデイトナ




スポーツロレックスの最高峰デイトナ。その金無垢となると豪華さと気品を兼ね備えており、グレードの高さを考えても、ロレックスとしては“あがり”の1本と言えるだろう。

2023年からル・マン24時間耐久レース100周年を記念したデイトナ ル・マンが登場したこともあり、ゴールド系のデイトナが再注目を集めていることはよく知られている。スポーツロレックスの場合、以前はゴールドよりステンレスモデルの人気が高かったが、ここ数年は金価格の高騰を背景にブランド問わずゴールドウオッチが再注目されていることもあり、アンティークでもゴールド系のデイトナは注目度が大きくアップしている。

クロノグラフの機能美にゴールドのラグジュアリーさはよくマッチしており、もともとグラマラスなデザインがよりツヤ感を増している。近年のロレックスはやや赤みを帯びたエバーローズゴールドの人気が高いが、アンティークロレックスだと中心はイエローゴールド。目にも眩い明るめのトーンだが、アンティークデイトナのやや枯れた雰囲気とは相性がいい。腐食に強く、金属アレルギーの人も着けやすいという利点や、資産価値の高さも見逃せないポイントだ。

ゴールドはステンレスに比べると柔らかく、打ち傷などがつきやすい素材だが、金属加工技術に長けたロレックスだけあって、割金も独自の配合が成されている。ステンレス同等の堅牢性・気密性を備えたオイスターケースを実現できるのは、やはりロレックスならではと言えよう。

金無垢のデイトナは第1世代に分類されるRef.6239から存在している。この時期のゴールドモデルはステンレススチールモデルと同一レファレンスで、特別な仕様として押し出されていなかったのがおもしろい。ただ、当時から高価だったこともあり、市場での流通量は非常に少ない。さらに6239には、いわゆるポール・ニューマン ダイアルも存在するが、これがゴールドモデルとなると、現在では軽く億を超える市場価格で取り引きされている。

その後、1988年にデイトナは自動巻きムーヴメントを搭載した第4世代に移行。金無垢モデルには16528のレファレンスナンバーが与えられた。エル・プリメロベースのCal.4030を搭載し、ケース径が40mmにサイズアップしたこともあり、この世代はアンティーク的な雰囲気がは薄い。しかし、ゴールドモデルだと適度に枯れ感が感じられ、しかもロングセラーだったことから微妙な仕様違いが多く、そこがデイトナマニアから注目されていて、コレクター人気は高い。

レザーベルト仕様のRef.16518は、インデックスがアラビア数字に変更され(Ref.16528はバーインデックス)、こちらも雰囲気はなかなか渋い。この辺の世代はゴールド仕様のデイトナとしてはまだそれほど高騰していないが、今後は確実に注目を浴びていくだろう。価格も落ち着いているいまであれば、初めてゴールドのスポーツロレックスとして手を伸ばしやすい。


【80年代に日本でも大ヒットしたロレックス・バブルバック】そのレアモデルとして知られる“フーデッド”って?

2025/01/30
by 堀内 大輔

世界ではじめて防水ケースと自動巻きムーヴメントを搭載した腕時計として知られるロレックスの通称“バブルバック”。愛称の由来は、厚みのあるムーヴメントを納めるために裏ブタが泡のように膨らんでいたからである。
小振りで愛らしいフォルムのケースに加え、デザインのバリエーションも非常に豊富だったことから、日本では1980年代後半に爆発的人気を博した。

先述のとおり、多くのバリエーションが展開されたバブルバックのなかでもレアモデルのひとつに数えられるのが、今回取り上げている“フーデッド”と呼ばれる(ヨーロッパではカバードと呼ぶ)独特な形状のラグを備えたバブルバックRef.3065だ。
一説には、このフーデッドラグは、ラグとベルトにできる隙間を隠して少しでも美しく見せようと考案されたといわれており、1939年頃に登場。さらに33年に商標登録されたロレゾール(ステンレススチールとゴールドのコンビケース)仕様であることにも注目したい。

しかし、このフーデッドは発売当時はあまり人気が奮わず、生産数自体も極めて少なかったといわれる。そのため、現在は希少モデルとして珍重されているというわけである。

【商品詳細】Ref.3065。SS×YG(32mm径)。自動巻き。1940年代製。178万円。取り扱い店/ムーンフェイズ ショップページに移動


【LowBEAT Marketplaceでバブルバックを探す



【“タキテレ”ってご存じ?】軍事目的で考案された1940〜50年代当時のクロノグラフ時計にある計測スケールとは?

2025/01/29
by 堀内 大輔


業界唯一のアンティーク時計の専門誌「ロービート(LowBEAT)」編集部が毎週水曜日にお届けしているアンティーク時計初心者向けの入門記事。今回は「タキテレ」について取り上げる。

タキテレとは、クロノグラフ時計に装備されている計測スケールでタキメーターとテレメーターの両方を文字盤上に タキテレとは、クロノグラフ時計に装備されている計測スケールでタキメーターとテレメーターの両方を文字盤上に設けた個体をこう呼ぶ。

上の写真をご覧いただきたい。最も外側にある60から1000までの目盛りが青色で印字されているものがタキメーターで、その内側に1から12までの目盛りが赤で印字されているのがテレメーターである。

タキメーターについては以前に「【この奇妙な渦巻きラインはなんだ?】思わず納得する時代がわかるその意外な活用法とは!」と題して取り上げているためここでは簡単におさらいすると、これは1km移動するのに要した時間を計測し、その区間の平均時速を割り出すためのものだ。

対してテレメーターはこのタキメーター以上に当時よく使われていたと言われる。これは光と音の時間差から距離を割り出すための計測スケール。例えば光ったタイミングでクロノグラフのストップウオッチ機能を作動させて、音が聴こえたタイミングで止める。その際にクロノグラフ秒針が指し示す数字でどの程度離れているかおよその距離を把握できるというものだ。なお写真の個体はマイル表示だが単位をkm表示のタイプもある。

本来は軍事的な用途のために考案されたもので、砲撃した際に着弾地点から大体の距離を割り出すのに使われた 本来は軍事的な用途のために考案されたもので、砲撃した際に着弾地点から大体の距離を割り出すのに使われた。

文◎LowBEAT編集部
時計◎ギャレット クロノグラフ 手巻き(エクセルシオパーク4) 1960年代 48万円 |Curious Curio(キュリオスキュリオ)


【最も有名なミリタリーウオッチ】貫禄たっぷりなオメガ製イギリス軍用時計W.W.W.

2025/01/27
by 堀内 大輔

第2次世界大戦期、イギリス陸軍が採用した有名な軍用時計が“W.W.W.”だ。
このW.W.W.とは、“Wrist Watch Waterproof”の頭文字で、つまりは“防水腕時計”のことである。

W.W.Wシリーズは全部で12社もの時計メーカーが製造を担ったことでもよく知られている。アメリカ軍のミルスペックのように細かく規定されていたわけではなかったため、針の形状やケースサイズなどメーカーによって様々だったが、イギリス陸軍はその仕様について各時計メーカーに、大前提として“防水性能があること”を求めた。
陸軍では塹壕内の戦闘が多いが、そこは雨や泥でぬかるむ劣悪な環境にあった。そんな環境で使用する時計は、いかに雨や泥を防ぐかが重要であり、先の世界大戦での経験をフィードバックし、防水仕様の腕時計を求めたというわけだ。
このほか、“15石の手巻きスモールセコンドムーヴメントを搭載すること”、“黒文字盤で夜光インデックスを採用し、ケースのベルト取り付け部分がハメ殺しであること”を共通の仕様として要求した。

製造を担った時計メーカーと推定製造を列挙すると、オメガ(2万5000本)、レコード(2万5000本)、シーマ(2万本)、バーテックス(1万5000本)、ティモール(1万3000本)、ビューレン(1万1000本)、ジャガー・ルクルト(1万本)、レマニア(8000本)、IWC(6000本)、ロンジン(5000本)、エテルナ(5000本)、そしてグラナ(1000〜1500本)となっている。
これらを合計すると14万本以上という数になり、それゆえに今日でも比較的手に入りやすい軍用時計だ(もっともグラナなど製造数が少なかったブランドもあり、これらは希少)。

先述のとおり、仕様について細かく規定されていたわけではなかったため、同じW.W.W.でありながらも、メーカーによって細かな違いがあり面白い。後年、愛好家から人気を得た背景には、もちろん時計としての完成度や重厚なバックボーンもあるが、こうしたコレクター心をくすぐるポイントも関係しているのかもしれない。

ちなみにW.W.W.シリーズは、“ダーティ・ダース(Dirty Dozen)”と呼ばれることも多いが、これはあくまで、後年になって愛好家たちの間で定着した通称である。一説には1967年に公開されたイギリス・アメリカの戦争映画『The Dirty Dozen(原題)」がその由来だったといわれる。

【商品詳細】Ref.CK2444。SS(35mm径)。手巻き(Cal.30T2)。1940年代製。44万円。取り扱い店/SELECT ショップページに移動


【LowBEAT Marketplaceでミリタリーウオッチを探す


【いまさら聞けない】ロレックスの人気モデル“エクスプローラー” の歴史と変遷

2025/01/24
by 堀内 大輔

ロレックスのスポーツモデルでも常に上位人気にあるエクスプローラー。シンプルで視認性の良い3針モデルで、その誕生は1953年。3、6、9のみのアラビア数字インデックスが、無骨ながらクールな印象を与える。サブマリーナーと同じ年に生まれたモデルで、未踏の地を訪ねる探検家のために生まれたコンセプトはいまでも不変だ。その歴史を追っていこう。

初代モデルはRef.6350。搭載されているCal.A296はバブルバックの最終型で、分厚いローターが搭載された自動巻き。先端が球状になった秒針が特徴的だが、このモデルは短命に終わっている。ハニカムダイアルや白文字盤なども存在し、そうしたレアモデルならいまの相場では軽く2000万円近い価格になるだろう。
またほぼ同時期(むしろ6350よりも先行して)にRef.6150もリリースされていたが、こちらはノンクロノメーター仕様で、かつ必ずしも文字盤に“EXPLORER”の文字が入っていたわけではなかったため、6350が初代モデルにみなされている。

2代目のRef.6610の登場は1955年。ミニッツサークル付きの文字盤は6350などに同じだが、ムーヴメントは両方向回転ローターのCal.1030に更新されて、信頼性と巻き上げ効率がアップしている。このムーヴメントの更新によって、ケースバックもバブルバックからフラットな形状になり、腕へのなじみが良くなっている。

続く3代目のRef.1016は1960年から1989年頃にかけて発売されていたロングセラーで、このモデル以降はいまの市場でも比較的よく見かけることができる。Ref.1016は発売期間が長かったため、様々なマイナーチェンジが行われており、初期モデルにはミラーダイアルも存在するし、ムーヴメントもハック機能があるものとないものがある。一般的には初期のミラーダイアル仕様が最も高額で、続いてハック機能が付いた後期型、マット文字盤の前期型の順で市場価格が高い。

4世代目のRef.14270は1990年に登場し、2000年まで流通していた。5桁レファレンスになると機能的にも現行にかなり近くなり、風防はプラスチックからサファイアクリスタルに、ムーヴメントはハイビートのCal.3000に更新されている。日本では人気ドラマで主人公が使っていたこともあって、当時は爆発的な人気となった。正規価格も40万円弱と手が届きやすいこともあって、街中でもよく着けている人を見かけたものだ。

2000年には6桁レファレンスのRef.114270、2010年には39mm径と大型化されたRef.214270へと進化して、いまは40mm径のRef.224270の注目度も高い。しかし、現行の大きめなサイズ感がしっくりこないと旧モデルを探すエクスプローラーファンは少なくない。初期のモデルはかなり高騰していてなかなか手が届きにくいが、1990年代のRef.14270あたりならば、流通量が多くアンダー100万円でも探すことができるし、小ぶりなサイズ感も楽しめる。


【エクスプローラーをLowBEATで探す】