【現行ロレックスではもう見られない?】淡い色合いに退色したフェードベゼルが魅力的なGMTマスター

2025/08/07
by 菊地 信

今回紹介するのはロレックスのGMTマスター Ref.1675だ。現在でも人気のスポーツモデルとして注目を集める同シリーズは多彩なバリエーションを揃えており、初代モデルから高級路線を意識した金無垢仕様が展開されていた。

GMTマスターが登場した1950年代当時、第2次世界大戦で培われた航空技術が民間へと下り、ジェット旅客機の運用が活発になっていく過程で、国際線パイロットのための腕時計が求められていた。ロレックスはこのようなニーズを予見していたかのような、世界24地域のタイムゾーンを表示できるワールドタイムモデルを発表していた。そしてこの実績もあってか、53年にはパン・アメリカン航空がロレックスにパイロット用腕時計の開発を依頼したのだ。こうして54年に発表、55年に発売されたのが初代GMTマスター、Ref.6542であった。


ここで取り上げるGMTマスターRef.1675は、セカンドモデルにあたり、シリアルナンバーから1970年ごろに製造された個体だと思われる。20年以上にわたり製造されたロングセラーモデルであるため、初代モデルに比べて現存個体が多く、仕様違いなどの選択肢が多いことも魅力のひとつだ。ブレスレットは、巻き込んだステンレス板をリベットで接合した構造が特徴的で、通称“リベットブレス”として愛好家の間で親しまれている。現行品に採用されている無垢ブレスレットと比べると、強度の面ではやや劣るものの、軽量で腕なじみの良い装着感が大きな魅力だ。

また、長年の使用や複数回にわたる研磨により、ケースが痩せてしまい、オリジナルの形状を保っていない個体も多い中で、この個体は比較的オリジナルに近いフォルムを維持している。なかにはヘアライン仕上げの薄れや、エッジのダレが見られる個体も少なくないため、外装の状態が気になる人は、購入前にしっかりと確認しておきたい。

そしてなにより、この個体で特徴的なのが、経年変化によって淡い色合いに退色したベゼルインサートだ。これは、アルマイト処理が施されたアルミ製ベゼルによく見られる変化で、近年では“フェードベゼル”とも呼ばれ、アンティークならではの風合いとして人気を集めている。現行のセラミックベゼルには見られない、独特の質感が大きな魅力だ。

ムーヴメントにはロレックスのなかでも名作と名高いCal.1570を搭載。精度と耐久性に優れた設計が特徴的で、ヒゲゼンマイに製造の難易度が高い巻き上げヒゲを採用するなど、精度の向上を目的とした設計を積極的に採用したキャリバーであった。

注意点として、ロレックスのムーヴメントは、油切れが起きても問題なく稼働してしまう場合が多いため、時間の進みや遅れ、自動巻きローターからの異音、リューズ操作の違和感を覚えた際には早期のメンテナンスをおすすめしたい。修理業者や時計販売店によれば、不動状態になってから持ち込まれた個体は深刻なパーツの損耗や破損を起こしている場合が多く、修理費用が高額になってしまうとのことであった。高額な修理を避けるためにも、時計の不調を感じた場合にはかかりつけの時計店に相談してみてほしい。

現行品のようなハードユースには向かないものの、GMTマスターは現在でも日常使用に十分耐えうるスペックを備えている。アンティークならではのフェードベゼルが控えめな雰囲気を演出し、ビジネスシーンからカジュアルシーンまで幅広く活躍する、デイリーユースに最適な1本だ。

文◎LowBEAT編集部/画像◎サテンドール

【写真の時計】ロレックス GMTマスター。Ref.1675。SS(40mm径)。自動巻き(Cal.1570)。1970年頃製。277万2000円/サテンドール

セイコー製時計【当時世界的にも珍しい!?】高精度化を目指した国産ハイビートムーヴメント

2025/08/06
by 堀内 大輔

今回は国産時計メーカーがスイスの時計産業に対抗するために開発を進めていたハイビートのムーヴメントを搭載した時計を紹介する。

そもそもハイビートと呼ばれるムーヴメントは、機械式腕時計の精度をつかさどるテンプというパーツが、一般的に毎時2万8800振動(毎秒8振動)以上のペースで動くもののことを指し、それ以下の振動数のものをロービートとして区別している。当時のセイコーはスイスの天文台コンクールへの参加をとおして、振動数の向上、つまりハイビート化こそが時計の高精度化につながるものだと確信していたのだ。


ここで取り上げるのは、亀戸の第二精工舎が製造したハイビートの手巻きムーヴメント、Cal.4500Aを搭載した懐中時計である。
当時、手巻き式のハイビートムーヴメント自体が世界的にも珍しかったが、なかでも毎時3万6000振動(毎秒10振動)で量産されていた手巻きムーヴメントは、今回紹介するセイコーのCal.45系と、レディース用のCal.1964、諏訪精工舎のCal.5740Cなど、決して多くは存在しなかった。

既存のムーヴメントをベースにハイビート化していた諏訪精工舎のCal.5740Cと比較すると、Cal.4500Aは斬新な機械設計を取り入れており、歯車の数や特殊なレイアウトなどから、精度を出すことに特化した設計のムーヴメントであることがうかがえる。秒針を止めるハック機能も備えられているため、精度の高さをいかんなく発揮できるだろう。

もともとはグランドセイコーやキングセイコーといった高級モデルに搭載されていたムーヴメントだが、銀無垢ケースに納められた懐中時計モデルも一定数が販売されていたようだ。一見するとごく普通の懐中時計に見えるが、実際には高精度ムーヴメントを搭載しており、“羊の皮をかぶった狼”のような凄みを備えている。

銀無垢ならではのずっしりとした重量感は、ポケットから取り出すたびに特別な存在感を放ち、この懐中時計がただの実用品ではないことを感じさせてくれる。銀無垢ケースであるため、酸化による変色は見られるものの、それがかえって落ち着いた風合いを醸し出しており、長く使い込むほどに味わいが増すのも魅力のひとつだ。セイコー純正のシルバーチェーンとレザーカバーが付属している点にも注目したい。


【写真の時計】キングセイコー 懐中時計。Ref.45-2000。SV(43mm径)。手巻き(Cal.4500A)。1969年頃製。11万円/BQ



たくさんのご来場ありがとうございました【Thank you for coming】

2025/08/04
by 堀内 大輔

8月2日(土)・3日(日)で開催された「第6回 アンティーク時計フェア in 銀座」が無事終了いたしました。

心配されていた台風の影響も少なく、たんさんのお客様にご来場いただき、大盛況のうちに終えることができました。

暑い中、会場まで足をお運びいただき、誠にありがとうございます。

2026年にも開催を予定しておりますので、皆様のまたのご来場をお待ちしております。


LowBEAT アンティーク時計フェア in 銀座 実行委員会




The 6th Antique Watch Fair in Ginza, held on Saturday, August 2nd and Sunday, August 3rd, has concluded successfully. 

Contrary to concerns, the typhoon had little impact, and many customers attended. 

Thank you very much for making it to the venue despite the heat. 

We are planning to hold the fair again in 2026. We look forward to seeing you again.

【要チェックブランドは?】開催が迫るアンティーク時計フェアで狙い目のブランドを紹介!“マニア編”

2025/08/01
by 菊地 信

明日8月2日(金)・3日(日)に開催が迫るアンティーク時計フェアin銀座。今回はこのフェアでぜひ確認しておきたいブランドの魅力を紹介する。


注目ブランド1【ロンジン】

現在はスウォッチグループ属し、中堅クラスのブランドとして位置づけられているロンジン。だが、かつてはクロノグラフや軍用時計を数多く手がけてきたスイスの名門ブランドとして名を馳せていた。

ロンジンの堅牢さと高精度を追求した時計作りは高く評価されており、大戦中の旧日本軍パイロットもロンジンの腕時計を使用していたという逸話も残るほどだ。おすすめのモデルは定番の手巻き時計である通称“トレタケ”や、フライバック機構を備えたクロノグラフであるCal.30CH搭載モデル、ロンジン初の自動巻きコレクションであるコンクエストや、ハイビートムーヴメントが特徴的なウルトラクロンなどが挙げられる。ロンジンの製品は全般的に完成度が高く、整備さえ行われていれば、どの時計であってもおすすめできる。


【写真の時計】ロンジン センターミニッツカウンター。SS(37.5mm径)。手巻き(Cal.12.68Z)。1940年代製。360万円/取り扱い店:キュリオスキュリオ


注目ブランド2【セイコー】

1881年に服部金太郎が開業した服部時計店から始まり、いまや世界有数のマニファクチュールブランドへと成長を遂げたセイコー。1960年代にはスイスの天文台クロノメーター コンクールに参加し、67年には2位を獲得するほどまでに成長していた。そんな同社は、実用性と精度に優れた製品を数多く輩出し、日本の時計業界を支える存在であった。とりわけ60年代から70年代にかけて生産された機械式腕時計の完成度は非常に高く、いまなお名作として語り継がれる腕時計が数多く登場した。

その中でも、フラッグシップモデルとして販売されていたグランドセイコーやキングセイコーは、外装、ムーヴメントの完成度が非常に高いため、万人におすすめできる。また、スピードタイマーやダイバーズウオッチなど、スポーツモデルも充実しているため、自分好みのデザインを見つけやすいのも嬉しいポイントだ。一方でセイコー独自の自動巻き機構であるマジックレバーを採用したマチックシリーズやファイブスポーツなども、手ごろな価格で楽しめるモデルが多く、ビギナーにもおすすめしたい。また、クォーツ式腕時計のパイオニアでもある同社のクォーツムーヴメントを搭載した70年代から80年代にかけての製品も高品質であるため要チェックだ。


【写真の時計】グランドセイコー 1st。GP(35mm径)。手巻き(Cal.3180)。1963年製。71万5000円/取り扱い店:BQ


注目ブランド3【シチズン】

1918年に創業し、国産の他メーカーと開発競争を重ねながら成長を続け、国産腕時計の実用性を高めてきたシチズン。戦後は耐衝撃装置のパラショックや防水機能のパラウォーターなどを積極的に採用することで、よりいっそう実用的な腕時計を開発していた。薄型手巻きのデラックスや外周式自動巻きローターを採用したジェット、グランドセイコーに対抗するために製造されたシチズン クロノメーターや国産メーカーで初めてクリスタルガラスを採用したクリスタルセブンなど、数多くの名作を生み出してきた。

どうしてもセイコーの陰に隠れがちな同社だが、海外メーカーにも劣らない外装デザインや合理的な機械設計など、同じ腕時計であってもセイコーとは異なったアプローチが魅力的だ。
注目のモデルは、高精度を追求したシチズン クロノメーターやクロノマスターシリーズ、防水性を高めたパラウォーターケースを採用したモデル全般、頑丈なことに定評のあるホーマーシリーズなどが挙げられる。また、自動巻きムーヴメントも独特であり、外周式ローターのジェットやクリスタルセブン、レオパールなど、魅力的なモデルが豊富にあるため、ぜひ探してみてほしい。


【写真の時計】シチズン クロノメーター。GP(37mm径)。手巻き。1963年製。32万8000円/取り扱い店:時左衛門


注目ブランド4【オリエント】

国産メーカーの三男坊として語られることの多いオリエント。ムーヴメントの技術面ではセイコー、シチズンに遅れをとっていたため、薄型のムーヴメント開発や外装に注力した大胆なデザインの腕時計を数多く生み出したブランドだ。
おすすめのモデルは、手巻きのオリエント グランプリやグランプリスペシャル、スイマーなどの正統派デザインから、奇抜なカットガラスが目を引くクロノエースやハイエース。スポーツ系デザインのキングダイバーやオリンピアカレンダーなどが挙げられる。


【写真の時計】オリエント ファイネス。SS。自動巻き。1960年代製。22万円/取り扱い店:BQ


注目ブランド5【ティソ】

現在はスウォッチグループのエントリーグレードに位置しており、手ごろな時計を数多く手がけているティソ。アンティーク市場では高品質なモデルが数多く存在し、海外を中心にコアなファンが多いブランドだ。かつてはオメガと姉妹会社のような関係にあり、1930年にオメガと合併し、SSIHを設立していた。そのため、一部モデルではオメガとムーヴメントを共用したものも存在している。その後、このグループにレマニアも参入することで、レマニアのクロノグラフムーヴメントを搭載したモデルも登場する。

注目のモデルは、1930年に発表された世界初の耐磁時計“アンチマグネティック”や手巻きのクロノグラフ、防水ケースが特徴的なシースターシリーズやPR516など、日常生活での使用に最適なスペックを備えた時計が多い。アンティークウオッチの実用を考えているユーザーにはぜひチェックしてもらいたいブランドだ。


【写真の時計】ティソ T12。SS(37mm径)。自動巻き(Cal.794)。1960年代製。18万8000円/取り扱い店:Watch Tender 銀座


注目ブランド6【エテルナ】

現在、数多くの自動巻き腕時計に搭載されているETAベースのムーヴメントだが、その始祖とも呼べるムーヴメントを開発したのがエテルナだ。自動巻きローターの軸にボールベアリングを世界で初めて採用したことで知られ、後のETA2824やETA2892キャリバーに大きな影響を与えている。このほかにも、第2次世界大戦中のイギリス陸軍に軍用時計を納品しており、W.W.W.シリーズ、通称“ダーティ・ダース”を製造した1社としても有名だ。また、チェコスロバキア空軍にも軍用時計を納品していた。
注目のモデルは、自動巻きのエテルナマチックやW.W.W.シリーズ、防水機能を強化したコンチキなどが挙げられる。


【写真の時計】エテルナマチック コンチキ。SS(34mm径)。自動巻き。1960年代製。79万2000円/取り扱い店:プライベートアイズ


注目ブランド7【ジャガー・ルクルト】

19世紀の始めに創業した高級時計の製造ブランドで、数々の発明やパーツを開発してきた。現在まで同社を代表するモデルとして、レベルソやメモボックスなど、アイコニックなモデルが数多く存在している。ラグジュアリーな印象を受けるブランドだが、かつてはイギリス陸軍向けにW.W.W.、通称“ダーティ・ダース”の製造を担う1社として軍用時計を納品していたのだ。アンティークのジャガー・ルクルトには、シンプルで繊細でありつつも、実用的な時計が数多く存在していた。

その中でも注目のモデルは、アラーム機能を備えた手巻き、もしくは自動巻きのメモボックスシリーズや、バンパー式自動巻きのムーヴメントを搭載したモデルなど、多岐にわたる。製造された当時の、修理しながら使い続けるという設計思想が反映された堅牢なムーヴメントは、アンティークならではの魅力と言えるだろう。


【写真の時計】ジャガー・ルクルト メモボックス。Ref.E855。SS(37mm径)。自動巻き(Cal.815)。1960年代製。58万8000円。取り扱い店/WatchTender 銀座


なお、今回紹介した商品を取り扱うキュリオスキュリオBQ時左衛門WatchTender 銀座はアンティーク時計フェアにも出店しているため、会場で現物に出合える可能性も。ぜひ足を運んでチェックしてほしい。


文◎LowBEAT編集部

【ギラつかない風合いが魅力的!】控えめな雰囲気のアンティークロレックス

2025/07/31
by 菊地 信

「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。

今回紹介するのはロレックスのデイトジャスト Ref.1603だ。

36mm径のコンパクトなオイスターケースにフルーテッドベゼル、ジュビリーブレスレットを組み合わせた王道のスタイルだ。文字盤のネイビー色が落ち着いた印象で、シーンを問わずに活躍できるだろう。インデックス外周のクリーム色に焼けたトリチウム夜光が程よいアクセントになっている。


現行のロレックスを見慣れた人からすると、スリムな形状やヨレたブレスレットから、どこか頼りない印象を受けるかもしれない。しかし、立体感のある文字盤のロゴプリントや磨きこまれた針とインデックスなど、現行品とは異なるベクトルの魅力が詰まっているのだ。

細かいステンレス板を巻いた形状が特徴的なブレスレットは巻きブレスとも呼ばれ、中空であるため非常に軽量で通気性にも優れている。強度的には現行品と比較すると大きく劣るが、時計本体の軽さも相まって、簡単に破損することはないだろう。ただし、定期的なメンテナンスや負担をかけない使い方を心掛ける必要がある。

高い防水性を誇るオイスターケースの中にはロレックスの自社製Cal.1570を搭載。精度をつかさどるヒゲゼンマイに、姿勢差が生じにくい巻き上げヒゲを採用し、従来の緩急針ではなく、テンプの外周に設けられたマイクロステラスクリューによって精度調整を行うなど、精度の向上を目的とした特殊な設計を積極的に採用したキャリバーであった。デイトの早送り機能は備えていないものの、そのシンプルな構造ゆえに故障やトラブルが少なく、現在でも名機として語り継がれている。

注意点として、ロレックスのムーヴメントは、油切れが起きても問題なく稼働してしまう場合が多いため、時間の進みや遅れ、自動巻きローターからの異音、リューズ操作の違和感を覚えた際には早期のメンテナンスをおすすめしたい。修理業者や時計販売店によれば、不動状態になってから持ち込まれた個体は深刻なパーツの損耗や破損を起こしている場合が多く、修理費用が高額になってしまうとのことであった。高額な修理を避けるためにも、時計の不調を感じた場合にはかかりつけの時計店に相談してみてほしい。

ロレックスと言えば、スポーツ系のサブマリーナーやエクスプローラー、デイトナなどが注目されているが、デイリーユースを考えている場合には、程よいサイズで装着性の良い、デイトジャストやオイスターパーペチュアルがおすすめだ。

文◎LowBEAT編集部/画像◎ムーンフェイズ

【写真の時計】ロレックス デイトジャスト。Ref. 1603。SS(36mm径)。自動巻き(Cal.1570)。1970年代製。74万8000円。取り扱い店/ムーンフェイズ

【要チェックブランドは?】開催が迫るアンティーク時計フェアで狙い目のブランドを紹介!

2025/07/30
by 菊地 信

8月2日(土)・3日(日)に開催が迫る、LowBEAT主催によるアンティーク時計フェア in 銀座。今回はこのフェアでぜひ確認しておきたいメーカーやモデル、人気ブランドの魅力にクローズアップしたい。


注目ブランド1【ロレックス】

言わずと知れた高級時計ブランドとして、国内外を問わず高く評価されているロレックス。資産性の高さや転売目的での話題ばかり目についてしまうが、腕時計としての完成度の高さこそがロレックスの真価と言えるだろう。また、探検家や研究者、映画作品やドラマなどで著名人が着用したエピソードが数多く残されている点も、ブランドの歴史に深みをもたせている。
堅牢かつ高い防水性を誇るオイスターケースと、耐久性と精度に優れた自社製のムーヴメントなど、実用性に特化した設計がユーザーからの信頼を得て、同社の高い地位を築いたのだ。


【写真の時計】ロレックス GMTマスター。Ref.1675。SS(40mm径)。自動巻き(Cal.1570)。1970年代製。278万3000円/取り扱い店:コミット銀座

おすすめのモデルはオイスターケースを採用したモデル全般だ。オイスターパーペチュアルやサブマリーナー、GMTマスターやデイトナ、エクスプローラーなど、ここでは紹介しきれないほどのシリーズに多彩なバリエーションが存在する。どのモデルも適切なメンテナンスさえ施されていれば、現在でも十分な性能を発揮するだろう。多彩な選択肢が存在するため、自分好みのデザインや予算からチョイスができるのも同社の楽しみ方のひとつと言える。時計ビギナーから玄人まで幅広く楽しめる、懐の深いブランドだ。


注目ブランド2【オメガ】

こちらも、スピードマスターやシーマスターなど、歴史的名作を数多く輩出してきた名門ブランドだ。かつて同社は、時計の精度を競う天文台コンクールに参加して好成績を残しており、機械式腕時計の高精度化に注力した製品を数多く製造してきた。


【写真の時計】オメガ イギリス陸軍 W.W.W.。SS(35mm径)。手巻き(Cal.30T2)。1940年代製。66万円/取り扱い店:キュリオスキュリオ

その中でも注目のモデルは、同社の傑作ムーヴメントとして語られる30mmキャリバー搭載モデルやシーマスター、コンステレーションだ。
熱烈な時計愛好家からすれば、定番すぎて退屈に感じてしまうかもしれない平凡なチョイスだが、安定した品質や精度はアンティークウオッチのなかでも光るものがある。精度と耐久性を重視したムーヴメントの設計や素材選びは、オメガに唯一無二の個性を与えているといっても過言ではないだろう。特に、1940年代から60年代にかけて製造された個体は、シンプルで美しいデザインと実用品としての堅牢さを兼ね備えているため、いまなお高い人気を集めている。


注目ブランド3【IWC】

時計愛好家の中では高い認知度を誇るIWC。手巻き式の名機Cal.83や、軍用時計の開発時に得られた耐磁技術を民生品に転用したインヂュニア、紳士的な装いのシャフハウゼンやスポーツユースのヨットクラブなど、数多くの名作を生み出してきた。


【写真の時計】IWC シャフハウゼン。Ref. R810AD。SS(34.5mm径)。自動巻き(Cal.8541B)。1968年製。29万8000円/取り扱い店:ブランド腕時計専門店ムーンフェイズ

どのモデルも高い実用性を備えており、1950年代に誕生したラチェット機構を応用したペラトン式の自動巻き機構は、高い巻き上げ効率と耐久性からIWCの中でも高い人気を集めている。手巻き、自動巻きともに、堅牢性を重視した設計がIWCの魅力と言えるだろう。
玄人向けの印象のある同社だが、ケースのサビやムーヴメントの状態にさえ気を遣えば、万人にオススメできるブランドだ。

なお、今回紹介した3本を取り扱うショップはアンティーク時計フェアにも出店しているため、会場で現物に出合える可能性も。ぜひ足を運んでチェックしてほしい。

 文◎LowBEAT編集部

【騎士の甲冑のようなブレスレットが魅力的!】ドレスとスポーツを両立させたカルティエの名作

2025/07/29
by 菊地 信

今回紹介するのは、カルティエが1980年代に製造したサントス オクタゴンだ。その名が示すとおり、8角形のビス止めされたベゼルが特徴だ。

80年代当時のラグジュアリースポーツの流行を感じさせるデザインだが、カルティエ独特の上品さにあふれた雰囲気をまとっている。サントスの絶妙なバランス感はベゼルやブレスレットのビスに使われているゴールドカラーが、ステンレスケースやブレスレットのソリッド感を和らげることで成立しているのではないだろうか。
それに加え、艶やかな白文字盤とローマンインデックス、青焼きの針を組み合わせることで、カルティエらしいエレガントさとクラシックさを両立させた、唯一無二のアイコン的な顔立ちに仕上げている。また、ケースには裏ブタのない構造を採用しており、本格的なスポーツユースを意識したモデルであったことがうかがえる。

特徴的なブレスレットにも注目したい。
ピンを使用せずに独特な形状のコマを連結する構造が目を引く。このような複雑なコマの形状を、加工の難しいステンレスの無垢材から高精度で削り出す技術は、70〜80年代にかけての金属加工技術の進化があったからこそ実現できたのだろう。

そして、このモデルを購入する際に注意が必要なのが、ベセルを固定するビスやブレスレットのサビと固着だ。メンテナンスを怠り、ベゼルのビスなどが固着してしまった場合、オーバーホールが困難になり、非常に高額な修理を必要とする場合がある。そのため、販売店や販売者に直近のメンテナンス歴を確認することをおすすめしたい。

今回紹介した個体については、2025年6月にメーカーのコンプリートサービスを受けており、文字盤、リューズ、針が交換済みであるため、安心して購入ができるだろう。また、使用後には必ず汗を拭きとることでサビの発生を軽減できるはずだ。中古品で相場より安価な個体を見つけた際も、安易に飛びつかず、コンディションと今後のメンテナンス費用を慎重に考慮すべきだろう。
カルティエの腕時計を代表するアイコンモデルとして人気を博したサントスの洗練されたデザインは、長く愛用できる1本として、非常におすすめだ。

文◎LowBEAT編集部/画像◎まじめなとけいや かめ吉

【写真の時計】カルティエ サントス オクタゴン。Ref.2966。SS(28mmサイズ)。自動巻き。43万9850円/まじめなとけいや かめ吉

【オメガやIWCだけじゃない】この夏、狙い目の隠れた名作実用時計 No.2

2025/07/28
by 菊地 信

ロレックスやオメガ、IWCなど、名だたる時計ブランドはその実用性や信頼性から高い価値を見出され、アンティーク愛好家たちの間ではいまなお高値で取引されている。

だがしかし、汎用ムーヴメントの採用や他社との協力開発によって良質な製品を生み出し、手ごろな価格帯で人知れず生き残り続けてきた傑作時計も数多く存在する。そこで今回は、マイナーだが確かな品質を備えた、隠れた名作シリーズを紹介する。


今回紹介するのは、1950年代にミドーが製造したマルチフォート パワーウインドだ。
マルチフォートシリーズは黎明期であった自動巻きのムーヴメントを防水ケースに搭載した実用時計で、防水性能以外にも耐磁、耐衝撃性能を備えた高性能な腕時計として同社の歴史を支えてきた。

このシリーズでは初期に搭載したバンパー式ムーヴメントが有名だが、ここで取り上げたモデルでは全回転式ローターのCal.917Pを採用している。
このムーヴメントはア・シールドのエボーシュムーヴメントをベースに、ミドー専用に精度の微調整が可能なインカスターシステムを組み込んだ特別品。天真には耐震装置を備えているため、日常的な使用でも安心できるだろう。

加えてこの個体には、初期に採用されていたFB(フランソワ・ボーゲル)ケースの意匠を継承したスクリューバック式の防水ケースが使われており、ムーヴメントの進化とともに、シリーズとしての一貫性を保ったデザインとなっている。さらに、ミドーの刻印が入ったオリジナルのプラ風防が残っており、非常に貴重な個体と言えるだろう。

文字盤はグレーカラーベースに十字状にツートン仕上げが施された秀逸なデザインで、くさび形インデックスやドーフィン針と相まって、1950年代の雰囲気を存分に感じさせてくれる1本だ。

文◎LowBEAT編集部/画像◎プライベートアイズ

【写真の時計】ミドー マルチフォート パワーウインド。SS(36mm径)。自動巻き(Cal.917PC)。1950年代製。14万3000円/プライベートアイズ

【希少なヴィンテージロレックスも!】全国からアンティーク時計が集結。ロービート主催による国内最大規模の“アンティーク時計フェア”の開催迫る

2025/07/25
by 菊地 信

全国のアンティーク時計ショップやディーラーが一堂に会する即売会「LowBEAT アンティーク時計フェア in 銀座」の第6回が、8月2日(土)・3日(日)の2日間で開催される!

同フェアは、業界唯一のアンティーク時計専門誌『LowBEAT(ロービート)』が、アンティークウオッチの魅力をよりリアルに体験していただくことを目的に企画し、2018年に初開催して以来、年に1回実施(コロナ禍は中止)しており、今年で6回目の開催となる。

【過去のイベントの様子を写真でチェック!】

 

最大の見どころは何と言っても、全国各地から集結する豪華出店陣。今回は各地から30の出店があり、アンティーク時計のフェアとしてはおそらく国内最大規模になる。ショップだけでなく、なかには卸を専門とするディーラーなどの出店もあるため、普段は味わえない経験や出物に出合える可能性もあるのだ。

出店一覧
アンティークウォッチ・モキタス/石井商店/英国屋・MJQ/AllTime/おろろじあんてぃーく/開化堂・名古屋時計修理センター/Curious Curio(キュリオスキュリオ)/京都屋/クールビンテージウォッチ&クールオークション/古拙時計/コミット銀座/スプリングウオッチファクトリー/セコンド/TIMEANAGRAM/TIME-BASE/ダイワ時計店/DISCOVERY WATCH/DECO/Dnf/とけいや時左衛門/BQ/BILLIONWATCH/VINTAGE WATCHES REALITY/まるか/ムーンフェイズ銀座/YS ANTIQUES/LIBERTAS/Watch Tender 銀座/WTIMES


現在、PassMarketで当日料金よりもお得な前売り券(デジタルチケット)を絶賛発売中。熱心なファンはもちろん、3日の14時以降は、無料の時間帯となるため、アンティーク時計ビギナーも気軽に参加してほしい。

 

【前売り券を購入する】

 

フェア情報「第6回 アンティーク時計フェア in 銀座」
開催日程:2025年8月2日(土)・3日(日)
時間:2日 10:00〜17:00/3日 10:00〜16:00(14:00〜無料開放)
会場:銀座フェニックスホール2F
住所:東京都中央区銀座3-9-11 紙パルプ会館2F(銀座フェニックスホール)

文◎LowBEAT編集部

【オメガやIWCだけじゃない】この夏、狙い目の隠れた名作実用時計

2025/07/24
by 菊地 信

ロレックスやオメガ、IWCなど、名だたる時計ブランドはその実用性や信頼性から高い価値を見出され、アンティーク愛好家たちの間ではいまなお高値で取引されている。
だがしかし、手ごろな価格帯で人知れず生き残り続けてきた傑作時計も数多く存在する。そこで今回は、マイナー気味だが確かな品質を備えた、隠れた名作シリーズを紹介する。

今回紹介するのは、1965年にスイスのティソが製造したヴィソデイト シースター T12だ。


1853年創業の老舗メーカー、ティソの防水時計シリーズであるシースターの名を冠しており、そのなかでも、1956年に登場したT12は、当時120m防水(12気圧)を誇る“超防水時計”として、当時の防水時計の概念を塗り替える存在であった。ちなみにこのほかにも、シースターの名を冠したモデルにはモータースポーツを意識したPR516や、ワンピースケースを採用したシースターセブンなどが存在していた。

高い防水性を実現するための12角形のスクリューバック式の裏ブタには、シリーズの象徴である船のモチーフが力強く刻まれている。ポリッシュ仕上げを主体とした35.5mm径の程よいサイズ感のケースは装着感を損ねない絶妙なバランスだ。

ムーヴメントには、当時のティソで多く採用されていたCal.784を搭載。高級機ではないため、簡素な仕上げだが、手巻き式ムーヴメントをベースに、スイッチングロッカー式の自動巻き機構を重ねた構造は、巻き上げ効率と信頼性に優れており、日常使用にも十分耐えうる性能を備えている。

またサンレイ仕上げの文字盤にアプライドインデックスを組み合わせたシンプルな顔立ちは、どんなシーンにもなじみやすい。希少なエクステンション式の純正ゲイフレアーブレスレットが装着されており、コレクターピースとしての価値も高い。

ティソのシースターシリーズは全般的に、外装、ムーヴメント、ともに高い品質を備えているため、十分なメンテナンスを施せば、いまなお活躍できる資質を備えている。
どうしても、ブランドの地位や資産性の観点から、アンティークウオッチ店での取り扱いが少ないティソだが、しっかりとしたケースの作りや、安定したムーヴメントの性能には目を見張るものがある。ぜひシースターシリーズに限らず、ティソの時計にも注目してみてほしい。

文◎LowBEAT編集部/画像◎WatchTender 銀座

【写真の時計】ティソ ヴィソデイト シースター T.12。Ref.43514。SS(35.5mm径)。自動巻き(Cal.784)。1965年頃製。18万8000円/WatchTender 銀座