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かつて 多くの時計ブランドが名を刻んだ時代。
しかし、その名の裏には別の工匠の手がありました。
1940～1950年代にかけて、
ロレックスを含む名だたる時計ブランドは自社の名を冠しつつも、
"ケース、ムーブメント、風防"
といったすべての部品を他社より調達し、組み立てていました。
故に、当時比較的無名のブランドであっても、
その背後には確かな技術が息づいていました。
とりわけ1940年代、
Chronographe Suisse
(クロノグラフ・スイス）というエボーシュメーカーが、
安価な「汎用」クロノグラフムーブメントを供給し、
多くのブランドにその名を刻ませました。
地元の宝石商すら自らのブランドとして販売した歴史があります。
本個体はそのうちの１つ。
この年代の時計の多くは、バルジュー社、ヴィーナス社、ランデロン社といった
舶来ムーブメントを搭載し、34～38ミリという絶妙なサイズ感とともに、
今なお貴重なコレクターズアイテムとしての価値を持ちます。
搭載ムーブメントは、Cal.ランデロン48。
通常のクロノグラフは上ボタンでスタートとストップ、
下ボタンでリセットを行いますが、
このモデルは4時位置の下ボタンでストップとリセットを行います。
文字盤に刻まれたパティーナ調の風合いは、
ヴィンテージの趣を漂わせます。
されど、その雰囲気は単なる古さにあらず、
エキゾチックな陰影を宿し、温かみのある装いと共鳴する一本です。
