Detail
─ マイクロローターが描いた未来 ─
ローターをムーブメントの地盤に埋め込むという発想。
それは、厚みを削り 構造を再定義するという挑戦。
マイクロローターは、機械の中に潜む詩であり、
時計が身体に寄り添うための、静かな革命でした。
─ 二つのブランド、ひとつの発想 ─
1950年代の終わり、スイスの空気に同時に芽吹いた発想。
ビューレンとユニバーサル・ジュネーブ。
互いを知らぬまま、同時期にマイクロローターという概念へと到達。
それは、偶然の一致ではなく、
時代が求めた構造的な必然だったのかもしれません。
─ “マイクロローター”と“プラネットローター” ─
ユニバーサル・ジュネーブが刻んだ“Micro-Rotor”という名。
その言葉はムーブメントの地盤に刻まれ、
やがて美と革新の象徴となりました。
一方、ビューレンの技術者ハンス・コッハーが願った名は
“Planet-Rotor”。
しかしその名は、時の流れの中で忘れられていきました。
名付けとは、記憶の支配でもあります。
─ 発明の帰属 ─
1954年、ハンス・コッハーが申請した、
マイクロローター特許 CH329804A。
翌年、同じくユニバーサル・ジュネーブが申請した CH329805。
驚くべきことに、
ユニバーサルジュネーブ・ポールルーター は、
ビューレンとの特許紛争で敗訴しました。
しかし、語られることの少ないその事実は
時計史の中で静かに埋もれています。
その後、ビューレンは、その技術的優位性を背景に
他社へのライセンス提供を積極的に行いました。
勿論、ユニバーサル・ジュネーブも例外にあらず
ポーラールーターに搭載されたマイクロローター機構に関して、
ビューレンとの間で1つのムーブメントごとに
特許使用料の支払いを強いられていたのです。
─ 特許の行方 ─
後の1958年にユニバーサルにも特許が付与されました。
ビューレンによる明確な先行申請があったことを考えると
商業的な妥協があった可能性が高く、
しかしそれを裏付ける証明は存在しません。
