Detail
近年、モバードの市場価値は静かに高まりつつあり、
コレクターの間でもその名が再評価され始めております。
本個体が搭載するCal. M95は、
かつてモバードの主力ムーブメントとして君臨していたもの。
ゼニスとの統合後、エル・プリメロへと置き換えられてはおりますが、
当時はモバード内で最高峰のクロノグラフ機構として
位置づけられておりました。
このムーブメントが特徴的なのは操作系。
下部プッシャーがスタート・ストップ、
上部プッシャーがリセットという、
従来のクロノグラフとは逆の設計。
慣れた操作を裏切るこの構成は、
かえって機械式への理解を深めさせる仕掛けともいえます。
ケース裏蓋には“FB”の刻印。
これは、ねじ込み式防水構造を世界で初めて特許申請した
フランソワ・ボーゲルによる製造を示すもの。
ロレックスが後にこの特許を買収し、
オイスターケースへと展開していった経緯を考えると
その痕跡がこの個体に宿っていることも、
決して些細ではありません。
本個体の裏蓋表面には、
かつての所有者の名が刻まれております。
