【まるで天然モノみたい!?】カルティエの名作、“タンク”シリーズのラピスラズリ

2025/04/28
by 菊地 信

マストタンクのなかではほかにない、ブルー単色のカラーダイアル。“ラピスラズリ”と呼ばれているが、実際にはエナメルによって天然の質感を再現したもので、初期の手巻きモデルによく見られたノンインデックスタイプの“ザ・ドレスウオッチ”と呼べる佇まいだ。


凛とした青色に、星空のような金色の斑点が散りばめられているのが特徴。この年代のエナメル文字盤はクラックが入りやすく、文字盤全体にクラックが入っているが、“貫入”と呼ばれるひび割れができた陶磁器のような質感にも見え、工芸品のような味わい深さを感じる。

こうしたクラックの入った文字盤は、主にロレックスで“スパイダーダイアル”とも呼ばれ、特定の年代の艶のある文字盤に発生しやすい。本来であれば、環境の変化に耐えきれず割れてしまった“不良品”として扱われてしまうのだが、同じ模様がない特別さや、侘び寂びを感じる風貌、経年によって生まれた偶然の産物としての希少性に注目され、愛好家たちに好まれる傾向にある。新品の文字盤では再現できない凄みがあるのだ。

ケースにはスターリングシルバーに金を張り付けた、ヴェルメイユと呼ばれる技法が使用されており、電解メッキで処理された金メッキよりも層が厚く、質感が非常に高いのが特徴。金無垢と同等の質感を維持しつつ、価格が抑えられているのがうれしいポイントだ。

ムーヴメントは手巻き式で、自分でゼンマイを巻き上げて時刻を合わせる必要がある。 しかし、この面倒とも思えるルーティーンは、洗顔やヘアセットのように毎日決まった時間に行うことで時間という概念を再認識し、生活にメリハリを与えてくれることだろう。 また絶対に遅刻できない会議がある日は、針を5分進ませるという使い方も可能だ。時間厳守、標準時刻ピッタリなど、時間にコントロールされている現代でこそ、自分の時間を大切にする寛容さが必要なのではないだろうか。自分だけの時間の流れ、自然的な変化を求める人におすすめしたいカルティエのラピスラズリLMだ。

 文◎LowBEAT編集部

【写真の時計】カルティエ マストタンク LM。ヴェルメイユ(23mm×30mmサイズ)。手巻き。1970年代製。32万8000円。取り扱い店/DECO


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