大振りなオーバルケースに14角形のベゼル、黒文字盤によく映えるイエローの針など、スポーティな印象を与えるこの時計は、1960年代にロンジンがリリースしたフライバック クロノグラフだ。優美な時計を数多く生み出してきたロンジンらしからぬ奇抜なデザインが目を引く。
ロンジンは様々な自動巻き機構を開発したほか、他社に先駆けてウルトラクォーツを発表するなど、挑戦的なメーカーであった。そういった背景からも、一歩先を見据えたデザインを積極的に採用していたのではないだろうか。
独特な目盛り(副尺)が先端についたクロノグラフ針はノギスのような役割を果たし、毎時1万8000振動(毎秒5振動)のロービートながらも0.1秒単位までの読み取りを可能としている。斬新なアイディアはもちろんのことだが、非常に細かい目盛りを加工するロンジンの技術力には脱帽だ。
ムーヴメントには名機として名高い、フライバック機構を備えたCal.30CHをベースに改修したCal.538を搭載している。このキャリバーでは永久秒針を廃し、30分積算計のみが配置されており、アシンメトリーな文字盤が特徴になっている。
またネジ込み式の裏ブタとベゼルで防水性を高めたケースに納められており、スポーツシーンを想定して作られた時計であることがうかがえる。ロンジンの伝統的な手巻きクロノグラフのムーヴメントと、スポーティな外装デザインのギャップがたまらない逸品だ。
アンティークのクロノグラフのなかでも、堅牢な外装を備えた安心感のある作りは、初めてアンティーク時計を手にする人にもおすすめできる。大きめのアンティークウオッチを探している人、特殊な機能を備えたクロノグラフを探している人は要チェックだ。
文◎LowBEAT編集部/画像◎ムーンフェイズ
【写真の時計】Ref.8225-2。SS(41mmサイズ)。手巻き(Cal.538)。1960年代製。84万8000円。取り扱い店/ムーンフェイズ