今回紹介するのは、1970年代に製造されたIWCのウォータープルーフ オートマチックデイトだ。
同年代のヨットクラブで注目された大理石模様の希少なブルーマーブル文字盤が採用されており、独特な風合いと存在感を放っている。オーバル形のステンレスケースには、裏ブタのないワンピースの防水ケースを採用しており、精密なムーヴメントを水気や湿気から保護するには最適な構造と言えるだろう。
今回紹介するのは、1970年代にロンジンが製造した手巻きクロノグラフだ。
ブラックを基調とした文字盤と赤の差し色がよく映えるデザインは、1970年代のスペースエイジデザインを彷彿とさせる。無骨な43.5mmサイズのステンレスケースとインナーベゼルを採用したその外観は、一見すると自動巻きムーヴメントを搭載しているかのような印象を与えるが、実際には手巻き式の三つ目クロノグラフムーヴメントの名機、Cal.バルジュー72をベースとしたロンジンのCal.330を搭載している。
今回紹介するのは、1960年代末期に製造されたロレックス ミルガウスの2代目モデル、Ref.1019だ。ミルガウスと言えば稲妻型の秒針を思い浮かべる人も多いが、今回紹介するモデルは秒針の先端に赤い矢印のついたシンプルな形状のものが採用されている。
もともとこのモデルは、レントゲン技師や無線技士など、強力な磁気にさらされる環境下での使用を想定したモデルであり、8万A/mに相当する1000ガウスまでの磁束密度に耐えるように設計されていた。モデル名の“ミルガウス”は、フランス語で“1000”を意味する“ミル(mille)”と、磁束密度の単位“ガウス(gauss)”を組み合わせたものに由来している。しかし、その特殊な用途ゆえに一般層からの支持は得られず、販売面では苦戦を強いられたモデルでもあるのだ。
高度経済成長期真っ只中であった1969年。セイコーはクォーツ式腕時計の開発を急ピッチで推し進め、同年の12月25日に世界初の市販クォーツ式腕時計“アストロン”を発売した。もっとも、初期型に採用された手ハンダによるハイブリッドICは耐久性に難があったため、後に対策部品へと交換されたという記録も残されている。
その後、セイコーは自社でICの開発・製造を可能にしたことで、クォーツ式腕時計の開発は飛躍的な進化を遂げることとなった。また、このIC製造技術を発展させることで、産業用・家庭用機器に搭載されるマイクロコンピュータチップの製造が可能となり、現在のセイコーインスツルやエプソンといった総合電子デバイスメーカーとしての礎を築き上げたのである。
今回紹介するのは、1970年代に製造されたジャガー・ルクルトのRef.2648-42 クロノグラフだ。
深みのあるブルーグリーンの文字盤に、赤いミニッツマーカー、山吹色のタキメーターがよく映えるスポーティーな色使いが特徴的で、同年代のラリーカーを思わせるようなカラーリングが、ジャガー・ルクルトらしからぬ雰囲気を漂わせている。さらに、12時位置から3時位置にかけて印刷されたホワイトカラーのパルスメーターも、このモデルならではのディテールだ。ベゼル側面に刻まれた大ぶりなエッジが、全体の武骨さをいっそう際立たせている。
今回紹介するのは、1975年から76年にかけて製造されていたとされるカルティエのウッド タンクである。
ユニークなのはケースと文字盤に “ブラジリアンローズウッド”を使用している点。ブラジリアンローズウッドはその名のとおりブラジル原産の木材だ。
ブラジリアンローズウッドは密度が高いために非常に硬く、木材の内部にヤニを含んでいるため経年によって深みのある色合いとツヤが出る特徴をもっている。また、含まれているヤニには虫食いや腐敗を防ぐ効果もあるという。そのため、古くから家具や楽器などに用いられることが多く、高級木材として人気を集めていた。しかし、その希少性から違法伐採のターゲットにされ、個体数が激減してしまったために、現在はワシントン条約によって取引が厳しく制限されているのだ。
今回紹介するのは、1968年前後に製造されたとされるロレックス デイトジャスト Ref.1600だ。
時計に興味のある人であれば、必ずと言っていいほど耳にする、定番シリーズではあるが、この個体は経年変化によって文字盤が変色しているのだ。経年変化による文字盤の変色と聞くと、時計自体の美しさを損ない、価値が落ちるというイメージをもたれがちだが、変色の仕方によっては、時計愛好家から高い評価を得る場合もある。
今回紹介するのは1960年代後半に製造された、セイコー 5スポーツだ。
当時加速していたスポーツブームに応えつつ、若者たちをターゲットに製品開発が行われていたセイコー 5スポーツは、目を引くチェッカー柄のベゼルをはじめ鮮やかでスポーツ感にあふれるカラーリングを採用したスタイリングが特徴的だ。さらに、性能面でもスポーツユースを意識しており、防水性の高いスクリューバック式のステンレススチールケースと頑丈なハードレックス風防を組み合わせることで、従来のモデル以上の耐久性を確保していたのだ。
今回紹介するのは、1990年代にダンヒルが発売していた、“ミレニアム”のクロノグラフモデルだ。アンティークウオッチと呼ぶにはやや新しいかもしれないが、往年の名作クロノグラフキャリバーを搭載したマニア必見の1本だ。
ダンヒルと言えば、イギリスの老舗メンズラグジュアリーハウスとして名を馳せ、バッグや革小物、シューズ、アクセサリーまで幅広く手掛けている。喫煙具の分野でも、ガスライターをはじめとするアイテムで認知している人も多いだろう。そんなダンヒルは、古くから腕時計の取り扱いも行っており、なかにはジャガー・ルクルトが製造を担ったモデルも存在していた。
そんなダンヒルのミレニアムは、1990年代に発表された腕時計コレクションであり、流線形のケースと専用のステンレスブレスレットが装着されたモデルであった。当時流行していたドレスウオッチのデザインが色濃く反映されており、ステンレススチールとゴールドメッキのコンビカラーが特徴的だ。西暦2000年という節目を意識したモデル名が示すように、近未来への展望とドレスウオッチとしての美しさとを見事に融合させた1本と言えるのではないだろうか。
歪みが少なく、繊細なヘアライン仕上げが施されたケースは、凸形のラグに向かってシェイプした造形となっており、この時計に唯一無二の個性を与えている。らせん状に溝が刻まれたリューズも、この年代のダンヒルならではの特徴だ。そして、ゴールドカラーのラインが特徴的なブレスレットのディティールに注目すると、その緻密な造形に驚かされることだろう。コマ同士はヒンジのように噛み合うことで接続され、裏面の溝に仕込まれたストッパーピンで固定を行っているのだ。
さらにバックル部分に目を向けると、折り畳み機構は年代相応の仕上がりであるものの、固定部分には無垢材から削り出された大型パーツのプッシュボタンと爪が用いられている。これはサビによる固着や、経年による破損・脱落を防ぐための設計と思われ、重厚な時計本体をしっかりと支えるにふさわしい作りとなっている。このような細部への手間のかけ方から、ダンヒルの腕時計に対するこだわりと老舗ブランドとしてのプライドが感じられる。
そしてこの時計の最大の魅力とも言えるのが、搭載されているムーヴメントだ。シースルー仕様の裏ブタからは、時計愛好家なら誰もが耳にしたことのある“エル・プリメロ”がその姿を現す。1969年にゼニスとモバードの共同開発によって誕生し、毎時3万6000振動というハイビートによって高精度を実現した、自動巻きクロノグラフの傑作である。
本モデルでは、さらにトリプルカレンダーにムーンフェイズ機能を追加した豪華な仕様のCal.410が採用されている。しかし、ゼンマイのトルクが非常に強く、自動巻き機構や輪列に負荷がかかりやすいムーヴメントとしても知られており、定期的なメンテナンスは欠かせない点には注意が必要だ。その点で言えば、メンテナンス済みのこの個体は、安心して使用できるだろう。
信頼性が高く、技術的にも成熟したムーヴメントと、作り手のこだわりが感じられる優れた外装部品を兼ね備えた90年代の時計は、価格とクオリティのバランスに優れた“狙い目”の存在であり、初めてポストヴィンテージ世代の時計に触れる人にとっても、安心感のある選択肢となるはずだ。
加えて、現時点では市場価値がさほど高くないため、偽造品や粗悪な改造品が少なく、市場が荒らされていないという点も見逃せない。
文◎LowBEAT編集部/画像◎BEST VINTAGE
【写真の時計】ダンヒル ミレニアム クロノグラフ エル・プリメロ トリプルカレンダー ムーンフェイズ。Ref.DC3324。SS(40mm径)。自動巻き(Cal.410)。1990年代。45万9800円。取り扱い店/BEST VINTAGE
今回紹介するのは、1940年代前期頃にロンジンが製造したスモールセコンドの手巻き時計だ。細く鋭い時分針と、シンプルな書体のローマンインデックスが特徴的で、アール・デコ調の雰囲気を漂わせている。同年代に製造されていた懐中時計を思わせるような繊細なディティールが魅力的だ。
ムーヴメントには、手巻き3針の名機として名高いCal.12.68Zを搭載。シンプルかつ量産を視野に入れた構造でありながらも、丁寧に分割された受け板や、細部まで面取りされた肉厚な歯車など、相当な手間をかけて仕上げられていることが伝わる。地板や受け板の表面には、黄金期の懐中時計に多く用いられた梨地の粒金仕上げが施されている。
このムーヴメントには、スモールセコンドやセンターセコンド、簡易クロノグラフなどのバリエーションが存在しており、ロンジンの歴史を支えた名機中の名機と言えるだろう。
薄いベゼルと力強いラグの組み合わせが特徴的なステンレスケースは、研磨などによるヤセも見られず、オリジナルに近いシェイプを保っている。35mm径のケースは数値上では小さく感じるが、文字盤の占める面積が大きいため、手首にのせた際には十分な存在感を放つ。また、ベルトの取り付け部分は強度を重視していたためか、パリス環式が採用されている。ベルトを交換する際には専門店での交換を推奨したい。
1940年代の時計ならではのシャープさと、現代での実用性を兼ね備えたロンジンの名機。アンティーク愛好家であればぜひチェックしておきたい1本だ。
文◎LowBEAT編集部/画像◎プライベートアイズ
【写真の時計】ロンジン ラウンド。SS(35mm径)。手巻き(Cal.12.68Z)。1940年代製。39万6000円。取り扱い店/プライベートアイズ