【36mm以下の小ぶりなミリタリー】70年代に“ハミルトン”が手がけたイギリス軍用時計

2025/06/05
by 菊地 信

今回紹介するのは、1970年代にハミルトンがイギリス陸軍に支給していたミリタリーウオッチである。
近年、ハミルトンが“カーキ アビエーション パイロット パイオニア メカ”として復刻したため、どこか見覚えがあるという方もいるのではないだろうか。斜体のブランドロゴに独特のミニッツマーカーは復刻モデルでも忠実に再現されていた。復刻版のアビエーションという名前からも空軍パイロット用を連想させるが、陸軍や海軍でも同じものを使用しており、今回紹介する個体はそのなかでも製造数が多い陸軍用だ。


陸軍、海軍、空軍を区別するには裏ブタに刻印されたNATOコードを見れば明らかで、陸軍では“W10”のコードが用いられた。ちなみに、空軍の場合は“6BB”、海軍は“0552”と表記されている。またそれぞれにシリアルナンバーも与えられており、この個体の“1205/73”という数字から1973年に納入されたことも読み取れる。

ステンレスの塊をくり貫いて成形したワンピースケースに防水型のテンション風防で防水性を高め、ムーヴメントにはインカブロックの耐震装置が装備されているため、日常的な使用にも耐えうるスペックを備えている。 ムーヴメントにはシンプルな手巻き式のCal.649(ETA2750)が搭載されており、量産されていたことも相まって非常に信頼性が高い。 大量生産を意識して製造された時計ではあるが実用性と耐久性の高いこのモデルは、アンティークウオッチの入門機としてもオススメできる逸品だ。 また当時のミリタリーウオッチの特徴として、バネ棒の破損などによる脱落を防止するために、ベルトの取り付け部分がはめ殺し式になっている。そのため、基本的にはNATOベルトや引き通し式のベルトを装着することを想定して作られている。装着できるベルトは限られてしまうが着脱が容易なため、ベルトでコーディネートを楽しみたいという人にもうってつけの時計と言えるだろう。

文◎LowBEAT編集部/画像◎キュリオスキュリオ

【写真の時計】イギリス陸軍 W-10。SS(32.5×3.55mmサイズ)。手巻き(Cal.649)。1973年頃製。19万8000円。取り扱い店/キュリオスキュリオ

【まるでホッチキスみたい】“こんな自動巻き時計あったのか”と驚く黎明期に生まれた1本

2025/06/04
by 菊地 信


今回紹介するのは、1930年代に誕生したユニークなワイラー製自動巻き腕時計だ。
何がユニークかと言うと、自動巻き機構の構造で、2重になった可動式の裏ブタをホッチキスのように上下に作動させることで内ブタのピンが押し込まれ、ゼンマイを巻き上げるという他に類を見ない独創的なものになっている。
この動作がホッチキスのようだということで、ずばりホッチキスの英名である“ステープラー”という愛称で親しまれているのだ。

黎明期ならではのユニークで面白い構造であるが、なぜ当時のワイラーは効率性に優れた回転式ローターを採用しなかったのだろうか。

理由は意外にも単純。
ロレックスがいち早く全回転式ローターの特許を取得していたためで、ワイラーを含めた他社は同様の構造を採用することができなかったのだ。
結果として、回転角度が制限されたバンパー式の自動巻きや可動ラグ式、そして今回紹介した裏ブタ可動式などのユニークな自動巻き機構が生まれたのである。

残念ながら、この裏ブタ可動式の巻き上げ効率はそれほど良くなかったようだが、ある程度のスペースを必要とする回転式ローターに比べてコンパクトな機構だったため、当時の流行の最先端であったレクタンギュラーケースにも納めることが可能だった。

またリューズは一般的なケース側面ではなく、裏ブタ側に設置されているため非常にすっきりとした見た目になっている。おそらく“手でゼンマイを巻き上げる必要がなく、時刻を合わせる手間も少ない”ということを強調するためのデザインであったと考察できる。

重厚感のあるレクタングルケースはまさに機能美にあふれており、アール・デコデザインのセクターダイアルが時代の様相を物語る貴重な逸品だ。自動巻き腕時計の歴史に残るユニークな機構をぜひ一度手に取ってもらいたい。

文◎LowBEAT編集部/画像◎プライベートアイズ

【写真の時計】Ref.2200。クロミウム(22.5×35mmサイズ)。手巻き。1930年代製。22万円。取り扱い店/プライベートアイズ

オメガ【薄型と防水を両立!】アラビア数字が上品なドレスウオッチ

2025/06/03
by 菊地 信

フランス語で“街角”という意味を指すデ・ヴィルは1960年、シーマスターの薄型モデルとして誕生した。その数年後、オメガのアメリカ代理店ノーマン・モーリスがオメガ本社に対し、デ・ヴィルの名称を文字盤に入れることを提案したことにより、“シーマスター デ・ヴィル”が誕生したとされる
その後、67年にシーマスターから独立し、薄型のドレスウオッチ専用のラインとして再編されるのだが、今回紹介するモデルはその独立する前後に製造されたと思われるモデルである。よく見ると文字盤から“Seamaster”の表記はなくなっているものの、裏ブタにはしっかりとシーマスターを象徴するシーホースがあしらわれているのだ。

この当時のデ・ヴィルは、同年代のシーマスターと比較すると、細いベゼルと非常に薄いケースが特徴となっており、ラグも細く華奢な印象を与えるが、スクリューバック式の裏ブタを採用し、シーマスターの名に恥じぬ防水性を確保している。
またマット仕上げのホワイト文字盤にはブレゲ数字のアラビアインデックスが使用されており、ドレスウオッチらしい上品な佇まいだ。黒いリーフ針もエレガントでありながら視認性を高めている。

ムーヴメントには、コンステレーション クロノメーターにも採用されていたものと同系統のCal.711が搭載。オメガの最高傑作と名高いCal.560系を、さらに薄型化した設計が特徴的で、パーツ配置からは後のCal.1000系に通ずる設計が見て取れる。錆防止のためにカッパーメッキが施された美しいムーヴメントは、オメガならではの仕上がりだ。

シーマスターの実用性とデ・ヴィルのドレッシーさ、二つのいいとこ取りをしたこのモデルは、実用性と上品さのバランスが取れたオメガらしい時計と言えるだろう。ドレスウオッチが好みだが、日常生活での使用には不安が残るという人には、ぜひチェックしてほしい1本だ。

文◎LowBEAT編集部/画像◎WatchTender 銀座

【写真の時計】Ref.165.008。SS(34mm径)。自動巻き(Cal.711)。1968年頃製。21万8000円。取り扱い店/WatchTender 銀座

【国産防水時計の出発点】シチズン成功の鍵となった防水機能“パラウォーター”とは

2025/06/02
by 菊地 信


今回紹介するのは、シチズンオートデーター ユニである。シチズンが製造していた自動巻き腕時計“ジェット”と同時期に登場した時計だが、ジェットの圧倒的知名度の高さと、オートデーター ユニ自体の流通量が少ないこともあって、アンティークシチズンのなかでも存在感の薄いシリーズだ。

そのなかでも、今回紹介する個体はスーパーコンプレッサーケースによく似た防水ケースが採用された珍しいモデルだ。シチズン独自のパラウォーターという防水機構が採用されたこの時計は、当時のジェット機の油圧機構パッキンに採用されるほどの耐圧性能をもつOリングを、リューズや裏ブタパッキンとして応用し、国産時計としては初めて本格的な防水機能を実現していた。

そしてこの防水性能をアピールするために、当時のシチズンは自動巻き防水時計の“オートデーター パラウォーター”をブイ(浮き)につけ、太平洋や日本海を横断させるという大胆なキャンペーンを実施していたのだ。実際に、時計は脱落していたものの、アメリカのオレゴン州にブイが漂着していたことが確認されている。このほかにも、対馬海流に乗せて流した時計は青森県や北海道、鹿島灘にも漂着するなど、キャンペーンは大成功を収めたとされている。今回紹介するモデルとは異なる時計ではあったものの、このPR効果は絶大で、シチズン製腕時計の技術力と信頼性を示したのであった。この影響もあってか、当時海やプールで時計を着けて泳ぐことが流行したというから驚きである。
しかし、パッキンの経年劣化による防水性能の低下や、防水性能を過信しすぎた使用方法によって、現在の市場で流通している個体のなかには水没してしまったことがあるものも少なくない。その点、今回紹介する個体はほとんど使用されていなかったのか、極めて良好なコンディションを維持しており、夜光塗料やインナーベゼルの塗料も変色せずに残っている。さらに、オリジナルのステンレススチール製ブレスレットとタグが付属している点は見逃せない。

デザインに注目すると、コンプレッサーケースに似たインナーベゼルを備えており、シチズンが海外のダイバーズウオッチからインスピレーションを受けていたことが伝わる。また、シルバーのサイレイ文字盤とブラックのインナーベゼル、筆記体のロゴが採用され、当時の国産時計と比較するとスタイリッシュなデザインに仕上がっている。そして、防水性能を象徴するかのように配された“40m”の青い文字が、どこか遊び心を感じさせてくれる。

この1本は、まさに“国産防水時計の夜明け”を告げる先駆的存在と言えるだろう。海外製品の影響を受けながらも、日本独自の技術と発想によって完成されたモデルとして、後の国産ダイバーズウオッチ開発にも大きな影響を与えたのではないだろうか。

文◎LowBEAT編集部/画像◎Watch CTI

【写真の時計】SS(36.5mm径)。自動巻き。1965年頃製。29万7000円。取り扱い店/Watch CTI

【スクエア形で防水時計!?】アール・デコ建築を思わせる直線的なデザインが魅力的

2025/05/30
by 菊地 信


1934年にミドーから登場した名作”マルチフォート”シリーズは黎明期であった自動巻きのムーヴメントを防水ケースに搭載した実用時計で、防水性能以外にも耐磁、耐衝撃性能を備えた高性能な腕時計として同社の歴史を支えてきた。そんなマルチフォートシリーズだが、その人気の高さから当時多くの派生モデルが展開されており、そのなかには今回紹介するような手巻きの角形モデルも生産されていた。

本作にはFB(フランソワ・ボーゲル)社製のサイドスライド式防水ケースが採用されている。FB社は数多くの防水ケースを手掛けていたことで有名なサプライヤーであり、パテック フィリップやロンジン、モバードなど、数多くのメーカーに採用されてきた実績がある。そういった歴史的価値から、いまなおアンティーク愛好家からの人気が高いケースなのだ。特に、この角形ケースはパテック フィリップも採用した実績があるため、市場での評価が高まっている。

この角形ケースは、固定用バーをケース側面に設けた溝に差し込んで、ケース本体と裏ブタを密着させる構造であった。この際、内側のパッキンが圧縮された状態で固定されるため、角形でありながらも防水性を確保できたというわけだ。

角形ケースの場合、風防やパッキンに均一な圧力をかけてケースに密着させることが困難であったため、様々なブランドが試行錯誤を繰り返していたとされる。このFB社製のサイドスライド式防水ケース以外にも、4本のネジを使用して均等な圧力で固定するクラムシェルケースと呼ばれる構造の角形防水ケースが存在していた。

角形ケースは直線を生かしたシャープなデザインで、いま見ても新鮮な印象を与えてくれる。角形の風防も、他社では見られないような立体感のある造形が魅力的だ。文字盤はシルバーベースに外周と内周にホワイトサークル、飛び数字に夜光入りのアルファ針を組み合わせた、この時代ならではのデザインが素晴らしい。内周のミニッツサークルのおかげで、角形時計でありながらも優れた判読性を確保している。エッジの立ったケースと柔らかな色合いの文字盤がドレッシーな雰囲気でありながらも、肉抜きされた秒針にまで夜光が入れられているディテールからはミリタリーテイストを感じられる。風合いある経年変化と角型防水ケースならではの重厚感が素晴らしいアンティークテイストを魅せた逸品だ。ムーヴメントには、手巻き式で耐震装置を備えたミドー社製のCal.800Cを搭載している。

文◎LowBEAT編集部/画像◎プライベートアイズ

【写真の時計】ミドー マルチフォート。SS(23×32mmサイズ)。手巻き(Cal.800C)。1940年代。29万7000円。取り扱い店/プライベートアイズ

【国産時計、オリエント】スイスの高級時計を思わせるデザインが魅力の1本

2025/05/29
by 菊地 信

どこかパテック フィリップのカラトラバを思わせるようなデザインが特徴的なこの時計は、日本の時計メーカーであるオリエントが1960年代に製造したグランプリ オリエントだ。
フラットなベゼルに砲弾型のインデックスの組み合わせは、明らかにスイスメーカーを意識した作りとなっており、繊細な筆記体のロゴや、鋭く磨かれた針、“orient”の刻印がなされたリューズからは高級機としての威厳が感じられる。

ムーヴメントには、グランプリ専用に特別調整を施した、同社のN型を搭載。輪列の軸受けに潤滑油の保持力を高める蓋石が採用されており、精度と耐久性を高める工夫も施されている。その影響もあり、手巻き式でありながら25石という石数を誇っているのだ。

また、金張りが好まれていた当時の国産高級時計としては珍しく、ケースにステンレススチールを採用し、さらに防水性までもたせていた。そのおかげか、この個体は文字盤のシミや腐食が少なく、ケースの形状もオリジナルを保っている。最低限の注意は必要だが、今日においてもケースの腐食やメッキ剥がれを気にすることなく、気軽に使用できるのはうれしいポイントだ。アンティークであるため、完全な防水性能は期待できないが、裏ブタ側にパッキンが入っているため、汗や水滴程度であれば防ぐことができるだろう。

デザイン面においては、海外メーカーのデザイン文法を取り入れることで、同年の国産時計とは一線を画すスタイリングになっている。1960年代のオリエントが、セイコーやシチズン、さらにはスイスの時計メーカーに対抗し、もてる技術の粋を集めた傑作と言える。
国産アンティークの高級機を探している方にはぜひチェックしてほしい1本だ。

文◎LowBEAT編集部/画像◎Watch CTI

【商品情報】オリエント。グランプリ オリエント。SS(35mm径)。手巻き。1960年代製。23万1000円。取り扱い店/Watch CTI

【薄型自動巻きのダイバーズウオッチ】復活で話題を集めるスイス時計ブランドの傑作

2025/05/28
by 菊地 信

トリコンパックスを筆頭にクロノグラフで有名なユニバーサル・ジュネーブ。その名をさらに広めたのが薄型自動巻き時計の“ポールルーター”だ。初出は1954年のスカンジナビア航空のアメリカ便就航を記念してリリースされたモデルで、その名前の由来は、北極点を通過するノースポールルートをたどっていたためとされている。

ジェラルド・ジェンタによるデザインと、マイクロローター式の自動巻きで有名なシリーズだが、多くの派生モデルが展開されており、そのひとつに防水性を高めたダイバーズウオッチ仕様があったことはご存じだろうか。
それが、今回紹介するポールルーター サブだ。上品で優雅な印象を与えるオリジナルのポールルーターとは打って変わって、マットなブラック文字盤にホワイトのインデックス、シャープな針とラグの造形が武骨な雰囲気を漂わせている。

しかし、ケースを側面から見た際には、ポールルーター特有の腕に沿った、装着性の高い滑らかにカーブしたラグが姿を現すのだ。このほかにも、夜光塗料の面積を広げた幅広なドーフィン針に、赤色のU字ロゴとクロスラインなど、ポールルーターのエッセンスを残しつつ、ダイバーズウオッチらしい意匠へと昇華させている。

ムーヴメントはユニバーサル・ジュネーブが得意としたマイクロローターのCal.1-69を搭載。このムーヴメントは当時の腕時計としては非常に長い、約57時間のパワーリザーブを実現している点にも注目だ。薄型のムーヴメントは、ダイバーズウオッチとしてはスリムなケースラインの実現にひと役買っている。

スタイリッシュなデザインは1960年代に製造されたとは思えないほど洗練されており、いまなお輝き続ける名作ダイバーズウオッチと言えるだろう。

文◎LowBEAT編集部/画像◎ジャックロード

【商品情報】ユニバーサル・ジュネーブ。ポールルーターサブ。SS(37mm径)。自動巻き(Cal.1-69)。1960年代製。79万8000円。取り扱い店/ジャックロード

【オメガが10万円台から狙える!?】黄金期を象徴する名作、コンステレーション

2025/05/27
by 菊地 信

今日オメガと言えば、俳優や女優、映画、スポーツ競技を広告塔とした、華やかな印象が強いが、かつては精度と堅牢性の高さを全面的に打ち出して宣伝を行っていた。特に、精度コンクールが開催されていた天文台のイラストや、その天文台コンクールの成績こそが、オメガを象徴する広告であったのだ。

このような天文台との関係性を背景として、1952年に “星座”を意味する“コンステレーション”が発表された。同モデルは、48年にオメガ創業100周年を記念して限定販売されたクロノメーターの自動巻き、“センテナリー”の成功と市場からのニーズを受け、次世代のオメガを代表する高精度の自動巻きとして誕生するに至ったのである。

今回紹介するコンステレーションは、12角の文字盤が特徴的なモデルと、“ジェラルド・ジェンタ”によるデザインで有名なCラインケースを採用したモデルだ。いずれもコンステレーションを代表するデザインであり、文字盤のクロノメーター表示と星のバッジが誇らしげに輝いている。このようにコンステレーションは同一のシリーズであっても、時代によってもテイストが異なるため、好みのデザインをチョイスできるという点がうれしいポイントだ。初代からの伝統的な12角ダイアルか、近代的な雰囲気のただようCラインケースか。どちらを選択するかによって使用者の好みや性格が表れるだろう。

コンステレーションの初代モデルには、半回転式ローター自動巻きのCal.350系を搭載。以降、全回転式ローターに改められたCal.500系、550/560系、1000系と、進化していくものの、搭載されるすべてのムーヴメントがクロノメーター仕様とされていた。今回紹介するモデルは、12角文字盤仕様が500系、Cラインケース仕様が近代的な設計となった550/560系が搭載されている。

ちなみに560系は先代の500系と比較すると、自動巻き機構がリバーサー式への改良された点ばかりに注目されているが、ベースムーヴメントが薄型化されている点も見逃せない。この550/560系では歯車のレイアウトを見直すことで、自動巻き機構の一部を埋め込むスペースを確保できたため、自動巻き機構を含めたムーヴメント全体の薄型化を実現している。また、スペース効率の向上によって、大径のテンプを使用できるようになったため、より一層精度が向上しているのだ。

オールドオメガを代表するシリーズであるコンステレーションは、もともとが精度を追求したモデルであることに加え、総じてムーヴメントも堅牢設計となっているため、定期的なメンテナンスさえ行えば大きな摩耗や不具合が起こりにくい。仮に部品が破損したとしても、流通量や互換部品の多さから、安心して使用できる時計であるため、誰にとってもオススメできる時計だ。

文◎LowBEAT編集部/画像◎黒船時計古酒店



【商品情報】K18YG(35mm径)。自動巻き(Cal.505)。1950年代後半製。59万円。取り扱い店/黒船時計古酒店




【商品情報】Ref.168.017。SS(34.7mm径)。自動巻き。1960年代後半製。18万7000円。取り扱い店/セコンド


ロレックスの魅力は資産価値だけじゃない【小径かつ軽量】信頼を築き上げた名作シリーズ

2025/05/23
by 菊地 信

ロレックスと言えば、高級時計の代名詞として語られ、跳ね上がった資産価値から、転売を目的とした購入者が多いイメージが大きいかもしれない。しかし、その人気を築いたのは、ハードユースを想定して製造された、ツールウオッチとしての歴史と信頼性の高さだ。

実用性の高さを求めて進化を続けたロレックスは、防水性を高めるためのオイスターケースや、手巻きを必要としない自動巻きのパーペチュアル機構など、数々の革新的な技術を生み出してきた。こういった技術を惜しみなく使用した腕時計は、圧倒的な堅牢性を誇り、幅広いユーザーからの信頼を得ていったのだ。かつての日本国内においても、国産時計が未成熟であったため、頑丈で正確な時計を求める労働者からの支持を集めていたとされている。

今回紹介するモデルは、1960年代に製造されたRef.6694のオイスターデイトだ。手巻き式のムーヴメントが搭載され、小ぶりで薄型なケースが特徴的。しかも、防水性が高いことで知られるオイスターケースが採用されている。ホワイトのバーインデックス文字盤とアルファ針がすっきりとした印象を与える。ワンポイントで青焼きの秒針が使用され、視認性を上げるとともに高級感を演出しており、特に丁寧に曲げ加工と研磨がなされ、立体的な形状に仕上げられた時分針と秒針からは、アンティークならではの温かみを感じられる。

ベルトには、側面の突起が特徴的なロレックス純正のリベットブレスが装着されている。このブレスはステンレス板を巻いてリベットでつなぎ合わせたブレスであり、軽量で装着感が非常に良い。時計本体の軽さも相まって、非常にバランス感の良い装着性を実現している。さらに時計の自重によるブレスへの負担も少ないため、耐久性についても期待できる。現行品の時計が重く、肩が凝ってしまう人にはぜひオススメしたい組み合わせだ。

シーンを問わずに使用できるデザインと、耐久性の高いムーヴメントと外装を備えたこのモデルは、誰にとっても使いやすい時計だと言える。加えて、生産期間が50年代から80年代までと、非常に長いモデルであったため、交換部品も多く修理がしやすい。そのため、引き出しや収納ボックスの箱入り娘としてではなく、毎日の腕元を飾る腕時計として安心して使用できるモデルなのである。ぜひ一度、ロレックスというブランドの色眼鏡を外し、1つの腕時計として向き合ってみてほしいモデルだ。

文◎LowBEAT編集部/画像◎ムーンフェイズ

【商品情報】ロレックス オイスターデイト。Ref.6694。SS(34mm径)。手巻き。1960年代製。38万5000円。取り扱い店/ムーンフェイズ

【イギリス陸軍で使用されたミリタリーウオッチ】シリーズ最大径も魅力的なW.W.W.の一本柱

2025/05/13
by 菊地 信

シーマは1862年にスイスのジュウ渓谷ル・ロックルで、時計商ジョセフ-シュワオプが設立したタバンの別名ブランドだ。かつては自社でムーヴメントの製造が行えるほどの技術力をもったメーカーであり、別名でもあるタバン名のムーヴメントは“Lisica SA”と呼ばれ、ジャガー・ルクルトの初期のレベルソにも採用されるほどであった。
しかし、1966年に、シーマ(タバン)はすべての生産を終了し、ブランド名の使用権を売却してしまっている。今回紹介するモデルは、シーマが全盛期であった40年代に製造されたものだ。シーマ W.W.W. 通称“ダーティダース”とも呼ばれる、イギリス陸軍が第2次世界大戦末期にスイスの時計メーカー12社に大量発注した軍用時計のうちのひとつだ。

ケースはステンレススチールが採用されており、IWCやジャガー・ルクルト、ロンジンやオメガなども製造したW.W.W.シリーズの中でも最も大きい38mmサイズのジャンボウオータープルーフモデルだ。ダストカバーを備えるスクリューバック式の防水ケースは堅牢な作りで、裏ブタに大きく刻印された管理ナンバーが特徴的。文字盤のロゴやブロードアローはすべてギルト製法によって作られたブラックギルトダイアルだ。視認性に優れたアラビアインデックスと夜光が塗られた太い針はミリタリーウオッチならではの雰囲気を感じさせる。ムーヴメントには曲線美やゴールドシャトンなど仕上げが素晴らしい自社製のCal.234を搭載するなど、クオリティとコストパフォーマンスに優れたミリタリーウオッチだ。

当時の時計としては大型である38mmのケースは、今日においても違和感なく使用できるため、普段使いのアンティークウオッチとしてもおすすめ。また、通常の腕時計とは異なり、ベルトの取り付け部分がはめ殺しになっているため、ベルトを交換する際には取り付けが可能なものであるか要チェックだ。しかし、NATOベルトなど引き通し式のベルトであれば気軽に交換が可能であるため、ベルトでコーディネイトを楽しみたいという人にとってはうってつけの1本だろう。

文◎LowBEAT編集部/画像◎プライベートアイズ

【商品情報】シーマ。W.W.W.。SS(38mm径)。手巻き(Cal.234)。1940年代。参考商品。取り扱い店/プライベートアイズ