
世界ではじめて防水ケースと自動巻きムーヴメントを搭載した腕時計として知られるロレックスの通称“バブルバック”。愛称の由来は、厚みのあるムーヴメントを納めるために裏ブタが泡のように膨らんでいたからである。
小振りで愛らしいフォルムのケースに加え、デザインのバリエーションも非常に豊富だったことから、日本では1980年代後半に爆発的人気を博した。
先述のとおり、多くのバリエーションが展開されたバブルバックのなかでもレアモデルのひとつに数えられるのが、今回取り上げている“フーデッド”と呼ばれる(ヨーロッパではカバードと呼ぶ)独特な形状のラグを備えたバブルバックRef.3065だ。
一説には、このフーデッドラグは、ラグとベルトにできる隙間を隠して少しでも美しく見せようと考案されたといわれており、1939年頃に登場。さらに33年に商標登録されたロレゾール(ステンレススチールとゴールドのコンビケース)仕様であることにも注目したい。
しかし、このフーデッドは発売当時はあまり人気が奮わず、生産数自体も極めて少なかったといわれる。そのため、現在は希少モデルとして珍重されているというわけである。
【商品詳細】Ref.3065。SS×YG(32mm径)。自動巻き。1940年代製。178万円。取り扱い店/ムーンフェイズ ショップページに移動
【LowBEAT Marketplaceでバブルバックを探す】

業界唯一のアンティーク時計の専門誌「ロービート(LowBEAT)」編集部が毎週水曜日にお届けしているアンティーク時計初心者向けの入門記事。今回は「タキテレ」について取り上げる。
タキテレとは、クロノグラフ時計に装備されている計測スケールでタキメーターとテレメーターの両方を文字盤上に タキテレとは、クロノグラフ時計に装備されている計測スケールでタキメーターとテレメーターの両方を文字盤上に設けた個体をこう呼ぶ。
上の写真をご覧いただきたい。最も外側にある60から1000までの目盛りが青色で印字されているものがタキメーターで、その内側に1から12までの目盛りが赤で印字されているのがテレメーターである。
タキメーターについては以前に「【この奇妙な渦巻きラインはなんだ?】思わず納得する時代がわかるその意外な活用法とは!」と題して取り上げているためここでは簡単におさらいすると、これは1km移動するのに要した時間を計測し、その区間の平均時速を割り出すためのものだ。
対してテレメーターはこのタキメーター以上に当時よく使われていたと言われる。これは光と音の時間差から距離を割り出すための計測スケール。例えば光ったタイミングでクロノグラフのストップウオッチ機能を作動させて、音が聴こえたタイミングで止める。その際にクロノグラフ秒針が指し示す数字でどの程度離れているかおよその距離を把握できるというものだ。なお写真の個体はマイル表示だが単位をkm表示のタイプもある。
本来は軍事的な用途のために考案されたもので、砲撃した際に着弾地点から大体の距離を割り出すのに使われた 本来は軍事的な用途のために考案されたもので、砲撃した際に着弾地点から大体の距離を割り出すのに使われた。
文◎LowBEAT編集部
時計◎ギャレット クロノグラフ 手巻き(エクセルシオパーク4) 1960年代 48万円 |Curious Curio(キュリオスキュリオ)

第2次世界大戦期、イギリス陸軍が採用した有名な軍用時計が“W.W.W.”だ。
このW.W.W.とは、“Wrist Watch Waterproof”の頭文字で、つまりは“防水腕時計”のことである。
W.W.Wシリーズは全部で12社もの時計メーカーが製造を担ったことでもよく知られている。アメリカ軍のミルスペックのように細かく規定されていたわけではなかったため、針の形状やケースサイズなどメーカーによって様々だったが、イギリス陸軍はその仕様について各時計メーカーに、大前提として“防水性能があること”を求めた。
陸軍では塹壕内の戦闘が多いが、そこは雨や泥でぬかるむ劣悪な環境にあった。そんな環境で使用する時計は、いかに雨や泥を防ぐかが重要であり、先の世界大戦での経験をフィードバックし、防水仕様の腕時計を求めたというわけだ。
このほか、“15石の手巻きスモールセコンドムーヴメントを搭載すること”、“黒文字盤で夜光インデックスを採用し、ケースのベルト取り付け部分がハメ殺しであること”を共通の仕様として要求した。
製造を担った時計メーカーと推定製造を列挙すると、オメガ(2万5000本)、レコード(2万5000本)、シーマ(2万本)、バーテックス(1万5000本)、ティモール(1万3000本)、ビューレン(1万1000本)、ジャガー・ルクルト(1万本)、レマニア(8000本)、IWC(6000本)、ロンジン(5000本)、エテルナ(5000本)、そしてグラナ(1000〜1500本)となっている。
これらを合計すると14万本以上という数になり、それゆえに今日でも比較的手に入りやすい軍用時計だ(もっともグラナなど製造数が少なかったブランドもあり、これらは希少)。
先述のとおり、仕様について細かく規定されていたわけではなかったため、同じW.W.W.でありながらも、メーカーによって細かな違いがあり面白い。後年、愛好家から人気を得た背景には、もちろん時計としての完成度や重厚なバックボーンもあるが、こうしたコレクター心をくすぐるポイントも関係しているのかもしれない。
ちなみにW.W.W.シリーズは、“ダーティ・ダース(Dirty Dozen)”と呼ばれることも多いが、これはあくまで、後年になって愛好家たちの間で定着した通称である。一説には1967年に公開されたイギリス・アメリカの戦争映画『The Dirty Dozen(原題)」がその由来だったといわれる。
【商品詳細】Ref.CK2444。SS(35mm径)。手巻き(Cal.30T2)。1940年代製。44万円。取り扱い店/SELECT ショップページに移動
【LowBEAT Marketplaceでミリタリーウオッチを探す】

ロレックスのスポーツモデルでも常に上位人気にあるエクスプローラー。シンプルで視認性の良い3針モデルで、その誕生は1953年。3、6、9のみのアラビア数字インデックスが、無骨ながらクールな印象を与える。サブマリーナーと同じ年に生まれたモデルで、未踏の地を訪ねる探検家のために生まれたコンセプトはいまでも不変だ。その歴史を追っていこう。
初代モデルはRef.6350。搭載されているCal.A296はバブルバックの最終型で、分厚いローターが搭載された自動巻き。先端が球状になった秒針が特徴的だが、このモデルは短命に終わっている。ハニカムダイアルや白文字盤なども存在し、そうしたレアモデルならいまの相場では軽く2000万円近い価格になるだろう。
またほぼ同時期(むしろ6350よりも先行して)にRef.6150もリリースされていたが、こちらはノンクロノメーター仕様で、かつ必ずしも文字盤に“EXPLORER”の文字が入っていたわけではなかったため、6350が初代モデルにみなされている。
2代目のRef.6610の登場は1955年。ミニッツサークル付きの文字盤は6350などに同じだが、ムーヴメントは両方向回転ローターのCal.1030に更新されて、信頼性と巻き上げ効率がアップしている。このムーヴメントの更新によって、ケースバックもバブルバックからフラットな形状になり、腕へのなじみが良くなっている。
続く3代目のRef.1016は1960年から1989年頃にかけて発売されていたロングセラーで、このモデル以降はいまの市場でも比較的よく見かけることができる。Ref.1016は発売期間が長かったため、様々なマイナーチェンジが行われており、初期モデルにはミラーダイアルも存在するし、ムーヴメントもハック機能があるものとないものがある。一般的には初期のミラーダイアル仕様が最も高額で、続いてハック機能が付いた後期型、マット文字盤の前期型の順で市場価格が高い。
4世代目のRef.14270は1990年に登場し、2000年まで流通していた。5桁レファレンスになると機能的にも現行にかなり近くなり、風防はプラスチックからサファイアクリスタルに、ムーヴメントはハイビートのCal.3000に更新されている。日本では人気ドラマで主人公が使っていたこともあって、当時は爆発的な人気となった。正規価格も40万円弱と手が届きやすいこともあって、街中でもよく着けている人を見かけたものだ。
2000年には6桁レファレンスのRef.114270、2010年には39mm径と大型化されたRef.214270へと進化して、いまは40mm径のRef.224270の注目度も高い。しかし、現行の大きめなサイズ感がしっくりこないと旧モデルを探すエクスプローラーファンは少なくない。初期のモデルはかなり高騰していてなかなか手が届きにくいが、1990年代のRef.14270あたりならば、流通量が多くアンダー100万円でも探すことができるし、小ぶりなサイズ感も楽しめる。

ロレックスが誇る3大発明と言えば、“オイスターケース(防水ケース)”、“パーペチュアル機構(自動巻き)”、そして瞬時に日付けが切り替わる“デイトジャスト”だ。
いずれも、腕時計の実用性を向上させる当時としては革新的な発明であり、今日でもその技術を発展させながら受け継がれている。
このなかでも、当時新興のブランドだったロレックスの名を一躍有名にした発明が、1926年に特許が申請された“オイスターケース”である。
翌27年、ロンドン出身のメルセデス・グライツが、ロレックスの時計を着用したままドーバー海峡の横断遠泳に成功し、その性能を証明したエピソードは、あまりにも有名だ。
以降、ロレックスはほとんどのモデルにオイスターケースを用いて、実用時計ブランドの雄として名声を得ていく。
今回取り上げるのは、そんなオイスターケースの50周年を記念し、1970年代に特別に製作されたオイスターパーペチュアルデイト、Ref.1530である。
文字盤に記念モデルであることを示す文字などが入っているわけではないが、このRef.1530がひと目で特別なモデルであることがわかるポイントが、従来にない角張ったケースである。見るからに堅牢なケースに加え、風防には当時はまだ珍しかったサファイアクリスタルガラスを採用、そしてロレックス自慢の自動巻きムーヴメントを搭載している。
製造数は、一説には1500本ともいわれる希少モデルであり、愛好家から珍重されている。
【商品詳細】Ref.1530。SS(36mm径)。自動巻き(Cal.1570)。1970年代製。258万円。取り扱い店/サテンドール ショップページに移動
【LowBEAT Marketplaceでロレックスを探す】

オメガ ランチェロ 金張り PK2990-1 1950年代 830,000円|Curious Curio(キュリオスキュリオ)
業界唯一のアンティーク時計の専門誌「ロービート(LowBEAT)」編集部が毎週水曜日にお届けしているアンティーク時計初心者向けの入門記事。今回は1940年代の時計に多くみられる「くさび形」インデックスについて解説したいと思う。
時刻を読み取るために時計の文字盤上に12個配置されたアラビア数字などの目盛りのことを一般的には “インデックス”と呼ぶ。また“時字(トキジ)”や “アワーマーカー”とも呼ばれる。
インデックスは、オーソドックスな1から12までのアラビア数字以外にも、ローマ数字やドット、そして棒状のバーなど代表的なものがいくつかあり、時分針の形状とともに視認性だけでなく、腕時計の個性を引き立てるデザイン的な要素としてもとても重要な意味をもつ。
今回取り上げた“くさび(楔)形インデックス”の“楔”とは木材や金属で作られたV字形あるいは三角形をした道具である。つまり、くさび形インデックスについて大雑把に言うと先端に向かって徐々に尖っていく形状にデザインされたものについてこう呼ぶ。そのなかで形が三角形のタイプはトライアングルとも呼ばれる。
このくさび形インデックスだが、主に1940から50年代によく使われた。トップに掲載した写真のオメガなど多くのブランドが採用しているが、特に50年代以前のロレックスの手巻きオイスターやオイスターパーペチュアル(自動巻き)で目にすることが多い。くさび形でも様々あるうえ、通常のバーインデックスと違いグッと古典的な雰囲気が楽しめるため、アンティークらしさという点では選択肢のひとつとして一考の価値はあるだろう。

クロノグラフの歴史において非常に重要なムーヴメントメーカーがバルジューだ。
アンティーククロノグラフの名機にはしばしばこのメーカーの機械が搭載されており、いまでもコレクター人気は高い。創設1901年と古い歴史をもち、現在はETAに吸収されたが、その命脈はちゃんと息づいており、多くの時計ブランドに採用されている。
バルジューは前述のように1901年にスイスの時計産業集積地、ジュウ渓谷で生まれた。メーカー名の“Valjoux”も“Vallée de Joux”に由来するものだ。創業者はジョンとシャルルのレイモンド兄弟で、当初はレイモンド兄弟社としてスプリットセコンドクロノグラフなどを開発していた。
飛躍のきっかけになったのは、1914年に開発されたCal.22だ。17石、2カウンターのコラムホイール式クロノグラフ。チラネジ付テンワを備え、振動数は毎時1万8000のロービートで安定した精度を叩き出した。パーツも頑丈で耐久性の高いしっかりした設計が成されており、現在の腕時計向けクロノグラフの祖ともいえる名機だ。16年には小型化されたCal.23へと進化して、こちらも多くのブランドに採用された。
1929年に社名をバルジューに変更し、44年にエボーシュSA(ムーヴメントメーカーの連合体)の傘下に入っている。この時代もバルジューはムーヴメントの小型化を推し進めており、より実用的な製品で高い評価を集めていた。46年にはCal.72を発表。直径29.33mmというサイズで、ブレゲヒゲ搭載の3カウンタークロノグラフを実現した技術力はさすがというほかない。このCal.72はロレックスのデイトナに採用されていたことでよく知られる。ロレックス以外にも、バルジューはパテック フィリップ、ロンジン、ジャガー・ルクルトなど、錚々たるブランドに採用されてきた。
Cal.22、Cal.23、Cal.72あたりがアンティークウオッチファンに注目されているムーヴメントだが、最大のヒット作は1973年にリリースされたCal.7750だ。クォーツショック後に生まれた自動巻きクロノグラフで、効率の良い片方向巻き上げ式を採用。自動巻きムーヴメントにクロノグラフモジュールを追加したいわゆる“2階建て”で、構造はコラムホイール式からカム式へと簡略化。しかし、それだけメンテナンス性が高く、各ブランドによるカスタマイズも容易になっている。1980年代から2000年代にかけてブライトリングやチューダーほか、多くのブランドが採用したロングセラーだ。
アンティークのバルジュー搭載機は評価が高く、市場でもそれなりの価格で取り引きされている。しかし、同じキャリバーであっても、各ブランドによる仕上げの違いなどで、見た目の美しさはかなり異なる。Cal.7750もいくつかのグレードが存在するが、同じように高級仕上げと汎用仕上げのグレード差は意外に大きい。購入時はできれば裏ブタを開けてもらって、仕上げまで綿密にチェックしたい。

業界唯一のアンティーク時計の専門誌「ロービート(LowBEAT)」編集部が毎週水曜日にお届けしているアンティーク時計初心者向けの入門記事。今回はアンティークのパテック フィリップについて解説したいと思う。
手巻きであれば王道の96系
自動巻きならスクリューバック仕様
アンティークのパテック フィリップの場合は、時計自体の作りや性能に対するクオリティが元々かなり高いため、特にどのモデルがいいということはあまりない。極論するとどれでも問題はないと言えるかもしれない。
ただし、レファレンスの種類もかなり多いため購入にあたっては特定のモデルやムーヴメントもさることながら、安くても100万円以上と高額となるため最終的には予算的な面で絞り込むことになるだろう。
そんなオールドパテックで最も人気が高く探している人が多いモデルといえばやっぱり“カラトラバ”である。つまり通称クンロクことRef.96だ。そのためまずは、このカラトラバで探すというのはパテック フィリップを狙ううえでの王道と言える。
このRef.96は下に挙げたように、ムーヴメントを載せ替えながら1932年から71年頃まで実に約39年間も長きにわたって生産された。そのため価格帯もかなり広い。
また96の特徴であるフラットベゼル、そしてケースとラグが一体となった美しいケースフォルムはカラトラバスタイルと呼ばれ、96以外にもそれを受けつぐレファレンスも多い。そのためあえてそちらを狙うという選択肢もある。
これには大きく3タイプにわかれ、10型の小振りな手巻きムーヴメントを搭載した“ベビー・カラトラバ”がRef.438と448。
同じ手巻き12型を搭載し30.5mm径の96よりも大きい35から36mm台の“ビッグ・カラトラバ”はRef.530、570、2508、2509。
そして自動巻きの“カラトラバ・オート”はRef.3403、3438、3439など選択肢も多く一考の価値はある。ただし、実用を考えるなら裏ブタがスクリューバック仕様を選ぶのが得策だ。
【Ref.96(カラトラバ)に搭載された手巻きムーヴメント】
・1935年 Cal.12-120
手巻き12型初の機械。Ref.96にはこのキャリバーを搭載した個体が最も多い
・1938年 Cal.12SC
Cal.12-120をベースに作られたインダイレクト式センターセコンドムーヴメント
・1950年 Cal.12-400
耐震装置を装備した12型の第2世代
・1960年 Cal.27-AM400
12型の3代目。ジャイロマックステンプを備え、振動数も毎時1万9800にアップ
文◎LowBEAT編集部

ここ数年、アンティークウオッチ市場での人気が非常に上がっているカルティエ。もともと時計史において重要なアイコニックピースを多くリリースしてきており、そもそも腕時計自体の祖ともいえるブランドなのだが、そうしたレガシーを背景にしただけにとどまらない人気ぶりだ。
世界でもトップクラスのジュエラーとして、19世紀から王侯貴族や富豪たちの寵愛を受けてきたカルティエが、腕時計を発表したのは1888年のこと。これは懐中時計全盛の時代に女性用のブレスレットの延長として提案したものだったが、1904年には世界初の本格的な腕時計を開発。ブラジルの飛行家アルベルト・サントス=デュモンの「飛行中も時刻を視認できるタイムピースが欲しい」という要望に応え、懐中時計のように胸ポケットから取り出すことなく、腕元に装着できる時計を生み出したのだ。このモデルは1911年に“サントス”として市販化され、これ以降の時計のトレンドは、懐中時計から腕時計に移行していくことになる。
その後のカルティエは、戦車をイメージした“タンク”、モロッコの太守が身につけていた甲冑を思わせる“パシャ”など、センセーショナルなデザインの時計を多くリリース。1960年代にはクルマに轢かれて変形してしまった時計からインスピレーションを得て変形時計のクラッシュを発表。サルバドール・ダリなどシュールレアリズムの影響を感じさせる名作だが、このように奇想天外なデザインを流麗にまとめ上げる構成力もカルティエならではと言えるだろう。もともとジュエラーだっただけに宝石のセッティング能力も高く、ゴールドの使い方も絶妙に上手い。
カルティエは製品ラインナップが広いが、どのモデルも華やかで人の目を引きつけるパワーに満ちている。70年代には比較的価格を抑えた“レ・マスト・ドゥ・カルティエ”という普及シリーズをリリースしており、そのなかのマスト タンクなどは近年までかなりリーズナブルに入手できた。一部の希少モデルを除けば、そのほかも中古のカルティエは価格が比較的抑えめだったこともあり、スタイリストやショップスタッフなどの目ざといファッション関係者が目をつけたのが数年前。アンティークカルティエの注目度は急速にアップし、いまやかなりの高値相場になってしまった。しかも争奪戦も激しく、レアモデルの入手はかなり難しくなっている。
もし古いカルティエの入手を考えているなら、1970~80年代くらいまで対象を広げた方が見つけやすいだろう。すでに1930~40年代のモデルとなると非常に高額になっており、そもそも市場にはほとんど出回らないが、高年式モデルなら流通量も多く、アンティーク的な雰囲気も十分に楽しめる。定番のタンクやパシャであってもバリエーションが多いので、ちょっとレアな個体を入手できれば差別化も図れるだろう。
【商品詳細】トノー。Ref.8379。K18YG(27mmサイズ)。手巻き(Cal.78-1)。1980年代製。149万円。取り扱い店/黒船時計古酒店 [ショップページはこちら]

1918年にスイス・ジュラ渓谷の麓にあるソロトゥルンで生まれたミドー。
100年を超える歴史をもつ同社のマイルストーンというべきモデルのひとつが、34年に発表した“マルチフォート”である。当時まだ黎明期だった自動巻きムーヴメントをいち早く搭載したうえ、防水、耐磁、耐衝撃性能にも優れたマルチフォートは、ミドーの名を一躍広め、今日もブランドを代表するコレクションとして継続している。
そんなマルチフォートのDNAを受け継ぎつつ、クロノグラフモデルとして1940年代半ばに登場したのが、今回取り上げる“マルチセンタークロノ”だ。
もっとも、一見してクロノグラフらしからぬデザインがマルチセンタークロノの大きな特徴だ。
プッシュボタンこそあるが、ご覧のとおり一般的なクロノグラフに見られるインダイアルを備えていないのである。
それではどうやって時間を計測するのかというと、実はセンターに時・分針のほかにクロノグラフ秒針(ブルーの針)と60分積算計針(レッドの針)を配しており、それで計測を行うのだ。余談だが、そのすっきりとした見た目から、当時のミドーの広告ではこのマルチセンタークロノを“ハンサムウオッチ”としてアピールしている。
またマルチフォートと同様に優れた防水、耐磁、耐衝撃性能を有していたが、一方で搭載するムーヴメントは、手巻きのCal.1300であった。これはバルジュー社製ムーヴメントをベースにしており、信頼性の高さにも定評がある。
【商品詳細】Ref.3800。K14YG(34.5mm径)。手巻き(Cal.1300)。1940年代製。121万円。取り扱い店/ケアーズ ショップページに移動
【LowBEAT Marketplaceでクロノグラフを探す】