【スピードマスターにも搭載】オールドオメガのクロノグラフは傑作揃い!

2025/03/14
by 堀内 大輔

Cal.33.3CHRO T2/画像:キュリオスキュリオ



オメガのクロノグラフと言うとスピードマスターがあまりにも有名だが、プロフェッショナルラインを確立する前から、オメガにはクロノグラフの伝統があった。その背景にはレマニアとの関係性が大きかったと言える。

オメガは当時の世界大恐慌を乗り越えるべく、1931年にティソなどとSSIHグループを創設して、製造体制の連携を図った。これが現在のスウォッチグループの前身にもなったのだが、翌32年にレマニアがSSIHグループに参画したことで、オメガは質の高いクロノグラフムーヴメントを採用することが容易になった。レマニアは軍用に自社製クロノグラフを納入すると同時に、エボーシュとして他社にムーヴメントを供給する余裕があり、当時のオメガはレマニアへの依存度がかなり高かった。

レマニアベースのオメガのクロノグラフとしては、まず1930年代に生まれたCal.33.CHROが注目に値する。これはレマニアのCal.15TLがベースとなっており、サイズは15リーニュ=33.3mmと当時としてはかなり大きめ。それだけにパーツの配置に余裕があり、リセットハンマーなども肉厚で耐久性が高いものが使用されている。ボタンを押したときのカチッとした感触が心地良く、いまでも評価の高い名機だ。

この流れを受けたオールドオメガのクロノグラフ最高峰が、1942年発表のオメガ名Cal.321(Cal.27 CHRO C12)だ。レマニアのアルバート・ピゲの設計によるもので、サイズが27mm径と小型化されたことで汎用性がアップ。伝統的な巻き上げヒゲやコラムホイールが採用されており、毎時1万8000振動の安定したロービートで優れた精度を叩き出した。このムーヴメントが有名になったのは、スピードマスターに採用されて月面着陸に貢献したという伝説があるからだが、実際はスピードマスターが生まれた1957年以前から、オメガのクロノグラフを代表するムーヴメントとなっていた。
しかもこのCal.321は、2019年に再生産されて現行のスピードマスターにも採用されている点がすごい。現行モデルでは主ゼンマイの長さを伸ばしてパワーリザーブが延長されているが、基本的な設計は80年前と同じ。それだけ設計に先進性があったのだ。

レマニアのクロノグラフは、その優秀さゆえにブレゲなどにも供給されていたが、1981年にレマニア自体がブレゲの傘下に入り、オメガとの関係性は一旦途絶えている。その後にブレゲがスウォッチグループに入ったことで関係が復活しており、両社の関係はかなり複雑な歴史を辿ってきたと言えよう。

オールドオメガのクロノグラフは、そのクオリティを考えれば市場価格はまだかなりリーズナブルだ。1940年代あたりの年代物となると出物は多くないが、それでも製造量が多かったブランドだけに、他ブランドと比べると状態の良い個体を探しやすいと言える。


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【ボブネイル?】文字盤からベゼルに至るまで1970年代に製造されたオーデマ ピゲに施された装飾とは!

2025/03/12
by 堀内 大輔

LowBEATマーケットプレイスに掲載されているアンティーク時計の中から今回は1970年代に製造されたオーデマ ピゲのドレスウオッチを取り上げる。

このモデル、驚くことに文字盤からベゼルに至るまで繊細な装飾がビッシリと施されている。これはボブネイルと呼ばれる装飾で、繊細かつ緻密さがエレガントな雰囲気のため宝飾系ブランドが手掛ける1970年代のドレスウオッチでよく見かける。

ボブネイルとは「靴の鋲釘(びょうくぎ)」の意味で、食器やランプなどヴィンテージのガラス工芸品などでよく見られる装飾で、ボツボツと突起が並んだ感じが靴の鋲釘のように見えることから、ボブネイル装飾と呼ばれるようになったと言われる。

ただ、時計の場合は小さなピラミッド型の四角形が規則正しく並ぶスタイルが多く、そのためクル・ド・パリとも呼ばれている。

さて、ここに取り上げたオーデマ ピゲのドレスウオッチは18金ホワイトゴールド製。ジャガー・ルクルトのCal.920をベースとする自動巻きムーヴメントCal.K2120を搭載する。

両方向巻き上げ式に加えて巻き上げ効率を高めるためにローターに21金を使用しており、機械の仕上げやその造形美もかなり素晴らしい。

わずか2.45mmと当時としては驚異的な薄さを実現したムーヴメントということもあって、18金ホワイトゴールドケースの厚さも6.5mmという薄さだ。それでいて実用的なスクリューバック仕様という点も見逃せない。145万2000円


文◎LowBEAT編集部/時計写真◎プライベートアイズ

【いまじゃ考えられない】世界中が宇宙に目を向けていた1970年代。オメガなど当時流行した異形ケースとは!

2025/03/06
by 堀内 大輔

かつて機械式時計の黄金期と言われていた1960年代までは、そのほとんどがケースは丸形であった。もちろん角形もあったが、その種類は少なく圧倒的に丸形だった。それが70年頃を境にして丸形でも角形でもない個性的かつ斬新な異形ケースが各社から登場するようになったのである。

その頃のスイス時計産業といえば、クォーツ時計が台頭してきたことに加えて、もともと人件費や製造コストが肥大化傾向にあったところへスイスフランの高騰がさらなるに追い討ちをかけていた。

そのため各社は製造コスト削減を強いられていたのである。当然、60年代の黄金期に生産されたものと同等レベルのクオリティを維持することはできなかった。その突破口として新たに見出されたのが、装身具としてのデザイン性だったと言われている。


オメガ スピードマスター マークIII 。Ref.176.002。45万9800円/BEST VINTAGE


こうして70年代には、各ブランドから様々な斬新かつストレンジなデザインが数多く生み出されていった。その代表的なものが、当時、世界中が熱い眼差しを向けていた“宇宙”というキーワードだったのだ。

当時の時計にかつてのSF映画を感じさせる流線形や独創的なフォルムのケースが多いのはこのためなのである。そしてこの時代のデザインワークは、今日、スペースエイジとも言われ、70年代のモデルをコレクションする最大の楽しみとして注目されるようになったというわけだ。

そんな異形ケースのなかでも目立って多かったのが、オメガのスピードマスター マークIII のように楕円を立体化したような、いわゆる卵形ケースだったのである。そして驚くのは、このような斬新なケースフォルムを多くのブランドが実現できているという点だ。まさしく外装の加工技術の高まりが時計の新たな時代のトレンドを加速させたことは言うまでもない。

ちなみに、このスピードマスター マーク III のケースは火山の噴火口にも見えることから愛好家の間ではボルケーノとも呼ばれる。


1970年代の時計をもっとチェック!


【今後入手はますます難しくなるかも!?】オールドロンジンを代表するクロノグラフ

2025/02/28
by 堀内 大輔




現在はスウォッチグループの中堅ブランドという位置付けのロンジンだが、かつては高精度ムーヴメントを得意として、ハイビート機ウルトラクロンで他社を圧倒していた実績がある。さらにマニュファクチュールとして、堅牢性と仕上げの美しさに優れたクロノグラフも多く手がけていた。

モバード、ミネルバ、ユニバーサル・ジュネーブ、エクセルシオパークなど、1920~60年代にクロノグラフムーヴメントを自社製造していたブランドはほかにもあるが、なかでもロンジンは別格の存在だと言える。メンテナンスを考えた設計でありつつ、パーツの配列やその仕上げは非常に念の入ったものであり、いまでも多くのアンティークウオッチファンを魅了している。

オールドロンジンのクロノグラフでも、特に名機の誉れが高いのがCal.13ZNだ。1936年に開発された同社初の腕時計フライバッククロノグラフで、ストップ&リセットで計測を止めることなく、何度もボタンを押さなくても連続して計時ができるフライバック機能は、航空機のパイロット、あるいは陸上競技などスポーツの計測用として、この時代に大きくニーズが高まっていた。

しかし、ただでさえパーツ数の多いクロノグラフにフライバック機構を追加するには、パーツが納まるスペースを確保するのに大いなる苦労があった。Cal.13ZNでは中間車をブリッジに埋め込むなど、かなり大胆な設計を採用している。それでいてパーツは肉厚で耐久性が高く、当時でも相当な製造コストがかかっていたことをうかがわせる。

Cal.13ZNの後を受け継いだ名機が、1947年に発売されたCal.30CHだ。ロンジンのクロノグラフとしては最後の名機と呼ばれるこのムーヴメントは、どうしてもコストが高くつくCal.13ZNの設計を見直したもので、爪を廃したリセットレバーでバネの動作に依存しない設計が成されていた。そのためパーツ配列もわかりやすくなり、メンテナンス性も向上している。


Cal.30CHは1960年代まで製造され続けたが、やはり製造コストの高さはネックになり、その後はクォーツムーヴメントに淘汰されていった。ロンジン自体も83年にスウォッチグループの傘下に入り現在に至っている。

前述したようにオールドロンジンのクロノグラフは、設計自体の美しさに加え、パーツの仕上げも非常にハイレベルで、マニュファクチュールキャリバーとしては最高峰に位置付けられている。ケースもステップベゼルを採用していたり、トレタケと呼ばれる裏ブタに爪が入った防水ケースだったりと、アンティークウオッチとして楽しめるポイントが多い。

市場でも状態の良いオールドロンジンはかなり希少になっているが、昨今の新作時計の値上がりを考えると、このクオリティのクロノグラフがいまの取引相場で手に入るなら、まだ割安感がある。今後はどんどん流通量が減っていくことは間違いないので、狙っている人には早めの入手をおすすめする。

【商品詳細】SS(35mm径)。手巻き(Cal.13ZN)。1940年代製。231万円。取り扱い店/プライベートアイズ


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【オールドオメガ・IWC・ロンジンにクローズアップ】好評の“大全”シリーズ最新作が本日発売

2025/02/27
by 堀内 大輔

定価4,950円(税込)



愛好家から支持される
オメガ・ロンジン・IWCにクローズアップ

業界唯一のアンティークウオッチ専門誌として2012年に創刊した『LowBEAT(ロービート)』で過去掲載し、人気を博した特集を一冊にまとめたスペシャルBOOKの第5弾になります。

今回は、普段使いできるアンティークウオッチとして愛好家からも支持される“オメガ”“ロンジン”“IWC”の3ブランドにクローズアップ。これらブランドがなぜ多くの愛好家から支持を得ているのか。その鍵となるであろう優れたムーヴメントの数々を開発者の視点から掘り下げるとともに、傑作機にもスポットを当てながら、それぞれの魅力を探っています。

愛好家も満足すること請け合いの濃密な内容であると同時に、これからアンティークウオッチを購入しようと考えているビギナーにとっても“指南書”としても役立つ1冊となっています。

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【“金色ハンジャル”にアスプレイの刻印】イギリス軍に贈られたと思われる78年製ロレックス シードゥエラーの中東オマーン仕様

2025/02/26
by 堀内 大輔

写真◎クールヴィンテージウォッチ



ロレックスの別注モデルとして有名なもののひとつに中東系の軍用モデルがある。その代表的なものがアラブ首長国連邦(UAE)とオマーンだ。ここではLowBEATマーケットプレイス内のショップ“クールヴィンテージウォッチ”の商品として掲載されている、とても貴重なオマーン軍仕様のシードゥエラーについて取り上げたいと思う。

中東系の別注モデル最大の特徴は、文字盤に大きく表示される国章である。オマーン仕様の場合は写真を見てもおわかりのように、交差する2本の剣にハンジャルと呼ばれる湾曲した短剣とベルトが描かれたオマーンの国旗にも見られる国章だ。そしてこれを採用したのが2022年まで国王だったカーブース・ビン・サイード(以降サイード)である。

そんな国章があしらわれたこのシードゥエラーだが、通常のオマーンのロレックス代理店によって販売された国章文字盤とは違い、裏ブタにはイギリスの老舗ジュエリーブランド“ASPREY(アスプレイ)”の刻印が施されている。

実のところサイードは、16歳からイギリスに留学し、20歳のときにはサンドハースト王立陸軍士官学校に入学、卒業後はイギリス軍キャメロニアン連隊に配属されている。そして66年に帰国するものの父のサイード・ビン・タイムールに軟禁されてしまう。息子のサイードは70年にクーデターを起し、それをイギリスが支援。結果的に父親を倒しブーサイード家の第14代君主としてオマーン国王となった。

そのため支援してくれたイギリス軍の特殊部隊や貢献者に対して感謝の気持ちとして様々な贈り物をしたと言われている。このシードゥエラーもそのひとつでイギリス軍に贈られたものだったようだ。ただオマーン仕様を作るにはイギリスのロレックス代理店を通さなければならないため、アスプレイの刻印はその証というわけだ。

ロレックス シードゥエラー Ref.1665(1978年製) 価格応相談
文◎LowBEAT編集部/協力◎クールヴィンテージウォッチ

ロレックス・憧れの金無垢モデルの魅力を再考【GMTマスター編】

2025/02/25
by 堀内 大輔

GMTマスターは、ロレックス初(というか世界初)のGMT機能搭載ウオッチとして1955年に登場した。同社はこれに先立つ1953年に、登山家向けにエクスプローラー、高い防水性能を備えたサブマリーナーをリリースしており、目的をはっきりさせたプロ向けのツールウオッチを拡充していた時代だ。

パンアメリカン航空からの要請でパイロット向けに開発されたこのモデルは、時差のある2カ国の時刻を同時に表示できるようにGMT針を備えており、さらにGMTマスターII以降は24時間目盛り付きの回転ベゼルを併用することで3タイムゾーン表示が可能な高機能モデルだ。超音速旅客機コンコルドのテスト飛行にも使われた実績があり、パイロットウオッチとしては当時から評価が高かった。

GMTマスターがエクスプローラーやサブマリーナーと明らかに異なっていた点は、最初からステンレスモデルだけでなくゴールドモデルがラインナップされていたことである。パイロット向けモデルということもあって、ある程度のステイタスをもたせて、高級路線を推進したかったロレックスの思惑が感じられる。

初代金無垢GMTマスターはRef.6542/8で、ステンレスモデルが青・赤ツートーンのいわゆるペプシカラーのベゼルを搭載していたのに対して、ゴールドモデルは単色ブラウンのベゼルを合わせていた。文字盤はインデックスの隆起が目立ついわゆるフジツボインデックスで、ステンレスモデルで使われていたベンツ針はアルファ針に変更されており、ぱっと見ただけでも印象はかなり異なる。

このRef.6542/8は製造期間が数年と非常に短かったうえに、高価な金無垢モデルということで製造本数が少なく、いまでは市場で見かけることはほとんどないレアモデルとなっている。市場価格は1500万円以上と非常に高騰しており、入手はかなり困難だ。

2代目金無垢GMTマスターとなるRef.1675/8は、1960年代から80年ごろまで製造されていたロングセラーだが、こちらもステンレスモデルに比べれば製造本数が少なく、市場価格は700万円オーバーと高値で推移している。製造期間が長かったこともあって、文字盤の表記などにディテール違いが多く存在する。

3代目金無垢GMTマスターのRef.16758は、サファイアクリスタル風防を備えて堅牢性・防水性を高め、ムーヴメントもハイビート&クイックチェンジに対応したCal.3075に更新されており、かなり現代的な仕様になっている。なかでも初期ロットはフジツボインデックスなどのディテールでヴィンテージ感が高く、GMTマスターファンからは高い人気を得ている。市場では比較的見つけやすいが、価格は500万円前後と決して安くはない。

これ以降はGMTマスター自体が廃番になり、GMTマスターIIに受け継がれていくが、ヴィンテージの雰囲気にこだわるなら、やはりRef.16758までの雰囲気が別格だ。ブラウンベゼルの褪色が、ゴールドのケースと相まって甘いトーンを醸し出しているし、フジツボインデックスの立体感もいい。

サブマリーナーなどと比べると、GMTマスターはなぜか近年まであまり人気がなく、特にゴールドモデルは敬遠される傾向にあった。いまの人気からすると考えられないほどの低価格で取り引きされていた時期も長く、そのころを知っていると現在の相場ではなかなか手が伸ばしにくいが、流通量の少なさを考え合わせれば、今後も価格が急落することは考えにくい。

【商品詳細】YG(40mm径)。自動巻き(Cal.3075)。1983年頃製。528万円。取り扱い店/コミット銀座


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完売していた『軍用時計大全』が重版決定!絶賛発売中です

2025/02/20
by 堀内 大輔

書籍名:Antique Collection 軍用時計大全〈第二版〉 LowBEAT編集部
製品番号:Ref.YK20250219
発行:株式会社シーズ・ファクトリー
編集:LowBEAT編集部
判型:A4ワイドサイズ(297×235mm)
ページ:160P(4Cフルカラー) 
定価:4,950円(税込)

初版完売につき、重版決定

業界唯一のアンティークウオッチ専門誌として2012年に創刊した『LowBEAT(ロービート)』で過去に取り上げ人気を博した特集を一冊にまとめたスペシャルBOOKの第3弾です。本書では、本誌9号から19号にわたって取り上げた“軍用時計”をクローズアップ。さらに国内有数の軍用時計ショップ“キュリオスキュリオ”全面協力のもと制作した、1910年代から2000年代までの世界の軍用時計290本以上を掲載する「軍用時計アーカイブ」を新たに追加しています。

同書は2023年に刊行しましたが、おかげさまで初版分は完売しており、その後も多くのお問い合わせをいただいていたことから、このたび重版が決定しました。


各国で採用された軍用時計を徹底解説

時計機能のみを追求した質実な意匠や重厚なバックボーンなど、多くの時計愛好家を魅了して止まない“軍用時計”。そもそも“腕時計の進化は軍用とともにある”といわれるほど、腕時計の進化を語るうえで欠かせない存在です。 本書はそんな軍用時計に1冊まるごとフォーカスしています。イギリス、ドイツ、アメリカ、日本といった国において、それぞれの軍で制式採用された軍用時計を体系的に整理し、わかりやすく解説しています。

さらに本書ならではのコンテンツとして見逃せないのが、“キュリオスキュリオ”全面協力のもと世界の軍用時計290本以上を掲載する「軍用時計アーカイブ」です。こちらは、時計の正面のみならず、軍管理コードが刻印された裏ブタやムーヴメントの写真に加え、支給された軍、製造時期、搭載キャリバーといった詳細なスペック情報まで併せて掲載しています。これだけの数の軍用時計を網羅し、詳細な情報をまとめた書籍類は過去にも例がなく、非常に資料的な価値も高い1冊となっています。


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【70年代のオリジナルは市場価格が高騰】5月に発売される復刻ロコモティブ。セイコーが明かした当時デザインを手がけた巨匠とは?

2025/02/19
by 堀内 大輔

2024年、クレドール50周年を記念してわずか300本だけが復刻されて注目を浴びたロコモティブだが、セイコーは来たる5月23日から新文字盤を発売すると発表した(定価187万円)。

このロコモティブだが復刻されるに伴って時計愛好家の間ではあることが注目されて話題を呼んだ。そこで1970年代当時のロコモティブ(写真)とはどんな歴史的な背景があるのか、それについて取り上げてみたいと思う。

かつてセイコーは74年にフランス語の“クレドール(「黄金の頂き」の意)”名で同社の高級ラインをブランド化。79年には、ネジ込み式のリューズと裏ブタを採用することで薄型ケースながら10気圧防水を実現した3種類の国産初となる高級スポーツモデルを発表した。

そのひとつがロコモティブ(Ref.KEH018)だった。そしてこのロコモティブのデザインを担当したのがジェラルド・ジェンタである。いまや一般ではなかなか手に入れること自体が難しいほど世界中で人気のオーデマ ピゲのロイヤル オークやパテック フィリップのノーチラス、そして昔のオメガのコンステレーション、C-LINEなど、歴史に名を残す数々の名作を手がけたことで知られるウオッチデザイナーの巨匠だ。

冒頭に触れた時計愛好家が注目したことというのは、このジェラルド・ジェンタがデザインしたことを明確に打ち出して商品訴求が行なわれたからにほかならない。それに伴って70年代当時のロコモティブが再注目されて一気に100万円を超える実勢価格となっているほどだ。

では、79年に発表された「3種類の国産初となる高級スポーツモデル」の他の2種類についてはどうか。こちらのデザインについてはジェンタではなく、セイコーの社内デザイナーによるものだった可能性が高いらしい。そのモデルとはKZTKZH。しかしながらケースのフォルムといい、ベゼルの造形といい、ジェンタデザインに共通する魅力は多い。


【写真の時計】
ロコモティブ。1970年代。Ref.KEH018。SS(36mmサイズ)。クォーツ(Cal.5932)。143万円/LowBEATマーケットプレイス
文◎LowBEAT編集部

【1964年に誕生】セイコーが手がけた国産初のワールドタイムモデル

2025/02/17
by 堀内 大輔

2024年に行われたパリオリンピックもそうだが、近年オリンピックの公式タイムキーパーと言えばオメガがおなじみだ。
しかし過去にはオメガ以外のメーカーが公式計時を務めたことがあり、1964年に東京で行われたオリンピックでは、日本のセイコーがタイムキーパーを務めた。

当時セイコーは同大会の開催に際して、自社の技術力を世界にアピールすべく、手巻きクロノグラフモデル“クラウン クロノグラフ”や、その上位機種とも言える“カウンタークロノグラフ”、そしてワールドタイム機能を備えた“ワールドタイム”といった国産初となるモデルを立て続けに発表している。

今回取り上げるのは、そのひとつで1964年発表の“ワールドタイム”である。
これは、62年発売のセイコーマチック シルバーウェーブで採用していた回転式インナーベゼルに世界26都市名を印刷。24時間針を加えた自動巻きムーヴメントを搭載することで、各地の時刻を表示する国産自動巻き時計で初となるワールドタイムモデルだ。ちなみに本作は当時、“国際人の腕時計”というキャッチコピーが付けられ、67年まで販売されていた。

なお裏ブタには聖火マーク(もしくはイルカマーク)が入っているが、なかには東京五輪マークが入ったモデルも確認されている。前者が市販品、後者はおそらくは大会関係者向けに製造されたものだと考えられている。

【商品詳細】SS(37.5mm径)。自動巻き(Cal.6217A)。1964年頃製。36万3000円。取り扱い店/Watch CTI 商品ページに移動


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